第三章 再会街道
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玄関で靴を履いていると、後ろから女将の声がした。
「やっぱりお祭りに出かけらるんですか。
今からなら、ちょうど宵宮のクライマックスが見られますよ。
道はわかりますか?」
「ええ、なんとなくは…」
曖昧に返事をすると、観光マップを持ってきてくれた。
「ここからだと、神社までは歩いて20分ぐらいです。
この駅前の道を通っていくとわかりやすいですよ。」
地図を指さしながら、道順を教えてくれた。
「いってらっしゃい。ゆっくり楽しんでらしてね。」
女将に見送られ、夕日の細道を駅に向かって歩き出す。
すると、さっきの喫茶店がある大通りまで来た。
地図で確認すると、“彩甲斐街道”とある。
(さい、かい、かいどうでいいのかな。)
“さいかいかいどう”
音だけにすると“再会街道”にも聞こえてくる。
祐未は偶然ではない“何か”があるように思えてならなかった。
御花畑駅を過ぎ、国道に向け進路を左へ折れると、
お囃子が風に乗ってかすかに聞こえ、先を行く人の数がどっと増えた。
(あの人たちもお祭りに行くのね。
ここからは、みんなに着いていけばいい。)
観光マップを折りたたんで、手提げバッグにしまった。
道の突き当たりに鳥居が見え、その下を
うごめくたくさんの見物客に、少々気が引けた。
が、鳥居の前まで来ると意を決し、祐未は喧騒の波へ飛び込んだ。
首を伸ばし、暗くなった境内を覗くと、既に山車が集まっていた。
そのきらめくような光景に、祐未は思わず心が浮き立った。
笠鉾からは目にも鮮やかなピンクの花すだれが、
噴水が湧き出すように幾重にもたゆみ、
それを内側の提灯が幻想的に照らし出している。
黒塗りの上に極彩色で彩られた屋台も、それはそれは荘厳であった。
山車のてっぺんでは強者が威勢良く音頭をとり、
担ぎ手たちが背負うような格好で足を踏ん張る。
「カラン カラン」と鐘が鳴った。
それを合図に周囲の若人衆が綱を引きながら加勢すると、
山車がゆっくり方向転換していく。
鉦や太鼓のリズムに合わせて笛が高らかにお囃しを奏で、
白い半被姿の子供達が提灯を手に掛け声を合わせる。
「わっしょい! わっしょい!」「ほーりゃい! ほーりゃい!」
子供たちの愛らしさに、顔が自然とほころんでくる。
やがて宵宮も終盤にさしかかると、
それまで賑やかだったお囃子がはたと止んだ。
静寂の中、笙の音色が厳かに辺りを包みこみ、
いよいよ柱立ての神事が始まった。
平成殿の正面入口に6メートルの柱が静々と引き上がり、
綱で垂直に固定されると、あちらこちらから歓声と拍手が沸き起こる。
その後も神事は手順通りに粛々と進められ、
最後に宮司たちが恭しく拝礼して、すべての儀式を終えた。
その時を見計らった
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