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最高の贈りもの
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第二章

「ばたばた死んだらしいしな」
「まさに究極の流刑地ね」
「けれど涼しいだろ」
「ここは涼しいんじゃなくて寒いっていうのよ」
 あまりにもだ。寒いというのだ。
「で、お迎えが来るまで暫くはここにいるのね」
「ああ、マンモスを探してウォッカとサウナを楽しんでな」
「全く。涼しい場所に珍獣を探す旅行をしようっていうからついて来たけれど」
 それでここに来たのだ。シベリアに。
「とんでもないことになったわね」
「失敗だったか?」
「最高の失敗ね」
「そりゃまた」
 こんな話をしてだ。二人はシベリアにいるのだった。  
 シベリアは確かに何もない。本当に何もなかった。
 ツンドラとタイガは雪ばかりで殺風景なことこのうえない。おまけに何処に行ってもお目当てということになっているマンモスもいない。
 それで二人は夜になるとだ。
 サウナであったまった後にウォッカを飲みながらだ。話をするようになっていた。
 話はいつもテレサの愚痴だった。とにかくこう言うのだった。
「もう二度とね」
「シベリアには来ないか」
「そうよ、絶対に来ないわよ」
 こうペドロに言うのだ。自分達の部屋の中で飲みながらだ。心なしかその部屋も収容所の一室めいている設備は暖房もあればベッドもあるがそれでもだ。そんな感じに思えるのだ。
 その部屋の中でだ。テレサはさらに言う。
「本当に流刑地じゃない」
「俺もまさかここまでとは」
「思わなかったっていうの?」
「ああ、思わなかったよ」 
 実際にそうだったというのだ。
「ここまでなんてな」
「けれどシベリアよ」
 テレサは顔を顰めさせてペドロに返す。
「有名じゃない」
「話には聞いてたさ」
「けれど。目ではなのね」
「日本の諺だな」
 今度はこう言うペドロだった。それからの言葉だった。
「百聞は一見にしかずだな」
「百聞はね」
「ああ、一見だよ」
 まさにそうだというのだ。
「本当にな」
「全く。付き合う方はね」
「災難か?」
「普通カップルの旅行にこんなところはないでしょ」
「安かったしな」
「誰も来ないからでしょ」
 異様に格安のツアーだったのだ。しかし参加したのはこの二人だけだった。もっと言えばガイドの人もいない、そんなツアーに参加してのことだったのだ。
「だからよ」
「そういうことか」
「そうよ。それにしても」 
 テレサは飲みながらだ。困った顔になってこんなことを言った。
「寒いわね」
「ああ、寒いよな」
「滅茶苦茶寒いわ」
「流石に部屋の中は違うけれどな」
「けれど。あまりにも寒いわ」 
 こう言うのである。
「特に足が」
「足がなあ」
「冷え性じゃないのに何か」
 南国スペイン人にとってはだ。余計にであった。

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