冴島 大河
第三章 内部崩壊
第二話 這い寄る恐怖
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冴島達が慌てて真島組の事務所に入ると、酷く荒らされた光景が目に入る。
書類は乱雑にばら撒かれ、家具はひっくり返る物ばかり。
傷付き倒れた真島組の組員を目の当たりにし、真島だけではなく全員が怒りに震えた。
「お、親父……」
壁にもたれる男が、こちらに向かって震える手を挙げていた。
それに気付いた真島は、その人物に駆け寄る。
冴島でも、男の顔は見覚えがあった。
「お前、西田か!?」
「あぁ……お久しぶりです……冴島さん……」
痛みを堪え、無理矢理笑顔を作る西田。
長年真島に付き添う、謂わば組長を良く知る者だ。
腕っ節は頼りないが、真島に深く信頼されている。
その男が、頭から血を流しているのだ。
「西田、何があったんや!?」
「喜瀬組……です」
その名は、全くの予想外だった。
喜瀬自身は今警察にいるため、今起きている出来事には関係がない。
だから敢えて、喜瀬の名前は外していた。
「喜瀬組は……秋山さんを捜しています……!!」
「何で秋山なんかを……」
「喜瀬が逮捕されるキッカケを、俺が作ったからだと思います……」
俯き、動揺する表情を隠した。
しかしどれだけ隠したって、焦っているのは見え見えだった。
事情を知る大吾が反論しようとするが、それすらも秋山に遮られる。
「親父……喜瀬もまだ……7代目を目指しているのは……間違い、な……」
ゴポリと口から血が溢れ、そのまま西田は気絶する。
全員気絶で済んでいるが、怪我をしている者が殆どを占めた。
手当をしよう。
そう言って準備し始めた時……。
ドカンと、遠くで爆発する音が轟く。
方角的には、ミレニアムタワーだ。
何かあったのだろうか?
冴島が大吾を見ると、大吾は無言で冴島に頷く。
「俺たちは、ここで手当をしておきます。すみませんが、冴島さんお一人で様子を見てきてもらえませんか?」
「俺も気になったんや。言われんでも、行くつもりしてましたわ」
大吾が、少し微笑む。
離れた所で沈んだ表情を浮かべる秋山の肩を、冴島は軽く叩いた。
「悪いが、6代目を頼むわ」
「……すみません」
「何言っとんねん、この事件を引き起こしたのはお前やない」
2回目、今度は力強く秋山の肩を叩く。
口下手な冴島なりの、励ましの言葉。
「アホな事やっとる、東城会のガキの仕業や。堅気のお前には、何も関係あらへん」
極道を辞めた桐生も金貸しの秋山も、桐生を捜す遥も。
ただの堅気、この事件には何も関係無い。
だからこそ、馬鹿な事をやっている屋良たちを許せなかった。
きっとあの爆発も……。
冴島は、エレベーターに向かって駆け出した。
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