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Three Roses
第三話 幸福と孤独その十三
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「若し太子に何かあれば」
「そなたではなくか」
「マリー様を王に」
「いや、やはり男の方がいい」
 王の言葉、考えは変わらなかった。
「だからだ」
「私ですか」
「若し太子に何かあれば」 
 その時はというのだ。
「そなたが王になれ」
「左様ですか」
「その為王位継承権を二位にしたのだ」
「男は私だけだから」
「隣国の王孫がいるが」
 北の山で境を隔てた国にだ、この国とも始終衝突を繰り返している。
「確かに縁戚にはあるが」
「それでもですね」
「あの王孫はまだ生まれたばかりだ」
「それではとても」
「あの国と同じ王を戴き二つの国を一つに出来てもな」
 それでもというのだ。
「難しい」
「そうなりますね」
「そうだ、だからそなたが王になり出来れば」
 そこから先もだ、王は大公に言った。
「男をもうけてくれるか」
「それもですか」
「そなたに頼みたい」
「王家の、国の為に」
「絶対にな」
「わかりました」
 大公は王の願いが強い、あまりにも強いことを受け取りだ。そうして。
 遂にだ、こう王に答えたのだった。
「ではその次は」
「そうしてくれるか」
「その様に」
 これが返答だった。
「そうさせて頂きます」
「ではな」
「はい、それでは」
「そして太子に何もなくとも」
 それでもとだ、王は言葉を続けた。
「助けてくれ、あの子を」
「わかっております」
 言わずともとだ、大公は答えた。
「そのことは」
「それではな」
「この国を守り栄えさせて頂きます」
「そうしてくれ、余はもうだ」
 王はわかっていた、このことを。
「長くない」
「いえ、何とか」
「わかるのだ、最早身体に力が入らぬ」
 こう弟である大公を見て言うのだった。
「これは死病だ、間違いなくな」
「王よ」
「そなたには何かと助けてもらった」
 礼も言うのだった。
「そして悪いがこれからもだ」
「この国をですね」
「そして我が子達もだ」
 太子だけではなかった、ここで言うのは。
「マリー、そしてマイラもだ」
「お二人もですね」
「そなたの娘と共にな」
 マリアもというのだ。
「大事に導いてくれ、セーラもいるが」
「あの娘は非常に聡明だからですね」
「そして心優しいからだ」
 それでというのだ。
「あの娘ともな」
「セーラは友人としてマリー様と娘を支え」
「そなたは叔父、そして父とな」
「即ち王族としてですね」
「支えてくれ」
「わかりました、では」
「後はそなた達に任せた」
 王は天井を見ながら大公に告げた、天井は宗教画が描かれていたがその絵は彼を天界に導くものには思えなかった。娘達を守る天使達の絵に見えた。そのうえで今自分の人生が終わり神の御前に行こうとし
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