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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 20
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と警備隊が警戒してる集団も、恐らくは一つだけだ。状況と軍人達が現れた時機は、海賊達こそが敵であると雄弁に物語っている。
 しかし。
 「あの人もヴェルディッヒも、元を辿れば村の入口で聴いた会話の中でも、誰一人「海賊」とは言ってないんだよね……」
 『奴らは獲物と見れば何者にでも容赦無く喰らい付く獣と同じだ』
 バーデル軍人が声を荒げて主張した危険な存在。
 略奪だなんだと不穏な言葉を連発され、勝手に「海賊共の話だ」と解釈していたが……それこそが誤りで、青年とバーデル軍人、共に口にした「奴ら」が同じ存在を示しているなら。

 (村の騒動に、海賊共は関係無い。バーデルの軍人達が追い掛けて来たのは、ある意味海賊共より危険な集団。村には今、二つの危険が潜んでる?)

 (にわか)には信じられない可能性。
 とはいえ、これならハウィス達の突然過ぎる行動、命を狙って飛んで来た斧や、遠目には襲撃された痕跡が無い穏やかな村の全景など、諸々の違和感もそれなりに納得できた。
 危険な集団の情報を伏せた自警団の判断も、少々意味が変わる。
 「そういえばヴェルディッヒも、奴らの頭がとにかく現実的で、危険と結果を冷静に秤へ乗せられる型だから、とかなんとか言ってたっけ……うわ嫌だ。私個人なら問題無しですか!? 大迷惑な! こっちにはこっちで都合があんのよ、都合がっ…… ん?」
 ちょっと「奴ら」の頭とやらを蹴り飛ばしたい衝動に駆られたが、不意に耳が小さな声を拾った。
 なんだろうと息を潜め、その声に集中してみる。
 「……ーっ!」
 葉擦れの音にも消えてしまいそうな声は、どうやら村の人達が発しているようだ。
 村と現在地との間に横たわる森林を鬱陶しく思いつつジッと目を凝らせば、教会への坂道付近にうろうろする黒点が複数。くっ付いては離れ、移動し、また寄り集まってを繰り返していた。
 「……何かあったのかな」
 ざわりとした悪寒に背中を押されて一歩踏み出し……止まる。
 このまま戻って良いのか、迷ったのだ。
 村は無事だった。ミートリッテは襲われた。青年と切り離された後は誰も追って来ない。待ち伏せも、警備隊による妨害も無かった。
 まるで、ミートリッテの帰還を促しているかのように。
 ハウィスの願いに反した「村へ戻る選択」が「奴ら」の罠だとしたら、不用意な行動を執った時、村にどんな悪意が降り注ぐだろう。
 多くの勢力に囲まれても捕まらなかった「奴ら」を相手に、凶行を止められるのか?
 (……「奴ら」が「誰」でも、村の人達は生きてる。海賊共が潜んでる事実は変わってない。『依頼』の期日はまだ過ぎてないんだわ。みんなを護りたいなら、シャムロックは絶対に戻らなきゃ駄目!)
 退いても進んでも同じ。待っているのはネアウィック村の敵で、ミートリッテ
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