第三十話 春季大祭その十三
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「あの娘もそういえば小さいわね」
「別に小さくてもいいじゃないですか」
「阿波野君は背が高いから言えるのよ」
そのやけに大きい阿波野君に言いました。
「私なんてかろうじて一五〇あるかどうかなのに」
「志田未来ちゃんと同じ位ですか」
「そうね。それ位?」
まだ高校生なのにあの演技力は何なんでしょうか。コメディーをやってる時の大きな目を剥き出しにしているのもとても面白かったです。
「多分ね」
「一五〇はあるんですよね」
「ひょっとしたら」
その辺りの自信は全然ないです。とにかく背は伸びないまま終わりました。子供の頃は女の子の中では結構高い方だったのに今ではこんな有様です。中学校から皆にどんどん抜かされていって今では遂にクラスで一番前になってしまっています。もうそこから動きません。
「だといいけれど」
「それがいいんですよ」
何故かそれがいいと言う阿波野君でした。
「それがね。先輩は」
「私の背が低くて阿波野君に何かあるの?」
「あるのよね」
先輩は私達の話を聞いていて横からこう言われました。
「それはね。多分ね」
「多分って」
「ちっちはねえ」
そしてどういうわけか私のことを言って苦笑いと一緒に溜息をつかれるのでした。そのうえでまた一言仰います。何か微妙な感じです。
「可愛いし真面目だし優しいし」
「はあ」
「それに頭だって結構いいのに」
「有り難うございます」
「それでもね。どうしてもね」
溜息と一緒に言葉を続けられます。
「気付かないみたいね。私はわかったわ」
「何をですか?」
「阿波野君、頑張ってね」
「はいっ」
私の質問には今は答えずに阿波野君に声をかけて。すると阿波野君はまたあの明るいというか能天気と言っていい声で応えるのでした。
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