巻ノ四十六 婚礼その六
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「向かってもらうぞ」
「はい、わかりました」
「それでは」
信之も幸村も応えた、そして。
息子達にだ、昌幸はこうも言った。
「二人には残念であろうが」
「妻を迎えてすぐの出陣」
「だからですか」
「御主達は必ず帰って来る」
このことは確信していた、父として。
「しかしな」
「それでもですな」
「妻を迎えてすぐの出陣はですな」
「離れ難い」
「そうしたものであるというのですな」
「わしもそうであった」
今度は己のことを言うのだった。
「妻を迎えてすぐの出陣は辛いものであった」
「どうしてもですな」
「そのことは」
「やはり絆が出来たばかりなので」
「その時故に」
「そうじゃ、しかし戦は武士の務め」
それ故にというのだ。
「行かねばならぬ、よいな」
「はい、承知しております」
「それがしもです」
信之も幸村も父にすぐに答えた。
「そしてです」
「必ず武勲を挙げてきます」
「そして真田家の名を天下に知らしめてきます」
「そうして参ります」
「頼むぞ、既に龍造寺家は主の隆信殿が討たれてじゃ」
そしてというのだ。
「後は鍋島直茂殿が取り仕切っておられるが」
「あのままでは、ですな」
「最早風前の灯火ですな」
「多くの兵を失ったしな、それにじゃ」
さらに言う昌幸だった。
「大友家も耳川で多くの家臣と兵を失い宿老の立花道雪殿が亡くなられた」
「そして島津家の大軍がですな」
「迫っていますな」
「これでは危うい」
この家もというのだ。
「だからじゃ」
「どちらの家もですな」
「危うく」
「関白様も兵を出されて」
「島津家の九州統一前にとなりましたか」
「そうじゃ、では御主達に行ってもらう」
こう息子達に告げた、そして実際にだった。
幸村はすぐに出陣の時が来た、すると。
幸村は十勇士達にはだ、穏やかな声で言った。
「ではな」
「はい、これよりですな」
「我等は九州にですな」
「忍として行くのですな」
「そうなる、千陣の軍勢よりも先にじゃ」
まさにというのだ。
「九州に入りな」
「そして、ですな」
「そのうえで、ですな」
「九州において忍として働く」
「そうなりますな」
「うむ、では今から行こうぞ」
見れば具足も着けていない、普段通りの身なりだ。
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