巻ノ四十六 婚礼その四
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「では」
「はい、今宵より」
「二人での夜を過ごしましょう」
「さすれば」
「父に言われたことがあります」
竹は夫に言った。
「生涯を賭けてです」
「そのうえで、ですか」
「あなたにお仕えせよと」
「ではそれがしは」
「殿もですか」
「あなたを全てを賭けて」
そのうえでというのだ。
「お守りします」
「そうして頂けますか」
「はい」
これが幸村の返事だった。
「その様に」
「では」
「二人で」
「共にですね」
「過ごしていきましょう」
二人で誓い合いその夜を過ごした、これがはじまりとなり。
幸村は妻との暮らしをはじめた、妻の名は竹といった。彼はその竹と仲睦まじい日々を過ごしはじめるとすぐにだった、
十勇士達もそれぞれだった、妻を迎えて家を持った、だが彼等の家は全て幸村の屋敷の傍にあり夜寝る時以外は常に彼と共にいた。
この時も同じでだ、幸村は領地を周りながら彼等に言った。
「夜はそれぞれの家に戻るが」
「はい、日の出と共にですな」
「我等いつも屋敷に来ていますし」
「確かに寝起きは共にでなくなりましたが」
「これまでと変わりませぬな」
「そうじゃな、皆家を持ったが」
それでもとだ、幸村も言う。
「変わらぬな」
「はい、やはり我等はです」
「共に生き共に戦い共に死ぬ」
「そうした間柄ですな」
「心と心で繋がっておる」
微笑んで言った幸村だった。
「まさにな、だからな」
「そうですな、しかしです」
ここで笑って言ったのは清海だった。
「わしの様な破戒僧まで妻を迎えるとは」
「兄上、最早我等はです」
伊佐が兄に言う。
「破戒僧ですから」
「そうじゃ、今更女房を迎えるなぞ言っても」
二人には霧隠が言う。
「今更じゃ」
「うむ、皆妻を持ってもよい」
海野も言う。
「むしろ堂々としていてよい」
「我等は皆武士となったのじゃ」
こう言ったのは由利だった、しかも嬉しそうに。
「なら破戒僧でもよいではないか」
「それよりもこれからはよき家を育てること」
穴山はそのことを念頭に置いていた、破戒僧がどうとかいうよりも。
「それが大事じゃ」
「さて、女房を持ったからには」
望月も言う。
「子ももうけてじゃな」
「これまで我等はそうしたことは考えてこなかったが」
根津はこれまでの自分達のことを考えていた。
「これからは違うな」
「武士として家を育てていこうぞ」
筧はここでも冷静で的確だった。
「皆な」
「いやいや、女房を迎えるなぞ」
最後に言う猿飛は清海と同じく笑っているが彼の笑顔の方が明るい。
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