第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:柩の魔女
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横線を引かれたプレイヤーの名前。
しかし、その死亡時刻と死因にはピニオラの感じた不可解の正体が明記されていたのだ。
「センパイ達はぁ、ど〜して集団自殺をした後にターゲットを殺せたんですかねぇ〜?」
ほんの数十分の差でしかない。
それでも、《加害者》が《被害者》よりも先に死亡しているという点には少なからぬ違和感を感じずにはいられないだろう。というよりも、それでは殺人事件など成立する筈がないのである。それこそ、彼等が幽霊になってからグリセルダを殺したというのであれば納得できなくもないだろうが、そんな絵空事は存在する筈がない。それどころか、集団で自殺など考えそうもない面々だった。自殺の可能性も在り得ないだろう。そうなれば、考えられる結果は一つしかない。
実行犯が、何らかの理由で殺害された。
犯人、もとい手を下した何者かはグリセルダか、その知人にあたる人物。
しかも当時、攻略最前線の層で活動していた彼等を《全員を状態異常によるダメージで殺害する》という常軌を逸した手口で行っているのだ。いっそのこと新種のモンスターに襲撃されたともなればスッキリと疑問が片付きそうなものだが、だとしたらグリセルダが無事であったのは如何なる理由か。
本来ならば《夫婦の絆に生じた皹》を題材にしたストーリーであったのに、ミステリー色が濃くて、かえってその側面が気になってしまうくらいだ。
………だが、自分で解けない謎であるならば、当事者に聞いてみる方が早いかも知れない。
なにしろ、彼とは初対面ではないのだ。
一度は顔を合わせて話をしたこともあるし、ましてや四ヵ月前にはクライアントとの話し合いを盗み聞きしていたくらいなのだ。あの場で諜報活動をしていながら何も関わりのないことはないだろう。
それでも、この大義名分さえ、もしかしたらただの《こじつけ》なのかも知れない。二度も自分のストーリーに介入し、そのどれもを筋書きから逸らして狂わせた男の子との再会を、無意識に望んでいたのかも知れない。そう思うと、どういうわけか胸の奥に何かが締め付けるような感覚を覚える。物語が完結した瞬間の愉悦ではない、全く別の何か。
苦しいような、心地良いような、でもどこか不安のような、不思議な気分。
しかし、この感情がどんなものであれ、彼ともう一度会わねば、この感情は晴れることはないだろう。
「近いうちに会いましょうねぇ………リンさん?」
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