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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 魔女のオペレッタ  2024/08 
最後の物語:柩の魔女
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で〜』


 言い終え、ピニオラは周囲に石をばらまく。
 壁や床に当たっても一切の音のしない投擲物に、彼は怪訝な表情を浮かべるしかなかった。


『あらあらぁ、分からないですかぁ? これ、意外に《第三層が最前線だった頃》にネタがバレちゃったテクニックなんですけどぉ………やっぱり()()()が特別だったんですかねぇ?』


 首を傾げてみるものの、どうにも思い至らない。
 だが、このままここに居たところで無用な《巻き添え》を受けるだけ。
 それに、既に()()()()相手には何時までも執着する気が起きない。
 腰のポーチから転移結晶と、少しだけ離れたところに解毒ポーションを置き、最後に一言。


『じゃあ〜、あとは頑張ってくださいね〜』


 そして、適当な主街区の名を唱えて転移。
 周囲の風景が光に掻き消えたその最後の一瞬、悲鳴が耳朶を震わせたところで、その物語は終止符を打たれた。

 それが、この物語の顛末。
 自らの劣等感を払拭する為にギルドの仲間を自分諸共モンスターの餌食にしてしまったプレイヤー。
 自らが再び攻略組という栄光に返り咲くために救える筈だった仲間を見殺しにして、終いには見ず知らずのプレイヤーに毒を盛られた哀れな元攻略組。
 二人の欲望に巻き込まれ、見捨てられた形で死んでいった女性プレイヤー達。



 この場所では、そんな記憶に再び触れることが出来る。

 荒く熱を持った息遣いをどうにか戻そうと呼吸を整えるのもそこそこに、ピニオラは立ち上がる。
 再び主人公の名を探して鉄の一枚板に視線を這わせていると、ふと目に留まるものがあった。

――――横線の刻まれた《Grithellda》の名。

 横線の刻まれた名のプレイヤーは、ピニオラの触れた物語の主人公を務めた中でも特に印象深いものだ。
 いや、正確に言うならば、その物語の主人公というよりも他の登場人物や展開についてという注釈を入れねばならぬだろうが。


「だってぇ………もしかしたらぁ、()()()じゃないかもですよねぇ〜?」


 呟くと、ピニオラはゆっくりと冷たい鉄の表面を撫でて、その手を上へとスライドさせる。
 その先にあったのは………

――――無傷で残る《Griselda》の名。


「………まぁ、いまさら貴女のことはどうでもいいんですけどぉ………」


 それでも、ピニオラを《終わってしまった物語》に鑑賞以外での執着をさせる理由。
 それは、何気なく刻まれた《不可解》に起因するものだった。
 ピニオラの指が鉄の碑から離れて数歩。そして横線が刻まれた名前で再び歩みを止める。
 それはどの列にもある、何の変哲もなく
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