第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:柩の魔女
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ぇ、実力が追いつかなくて前線から蹴落とされてぇ、自分よりも弱い人達に囲まれていた方が楽だったってことも、ぜ〜んぶ知ってるんですよ〜?』
調べはついていた。
彼女からすれば、適切な場面で適切な手札を切っただけ。
それでも、相手の仮面を剥がされた動揺は凄まじいものだった。大きく目を剥き、鋭い所作でピニオラに向き直った彼を見て、ピニオラの愉悦は嗜虐心を伴って一気に燃え上がった。
『な、なにを言っているのか分からないな………僕が攻略組だなんて、デタラメにも程がある………』
『じゃあ〜、お仲間が死んじゃった後に回収したアイテムはどうですかぁ? 今、大事に持ってますよねぇ〜? 返り咲くのに大事なんですものねぇ?』
反論する彼には、しかし表情の揺らぎがありありと刻まれていた。
苛立ちから焦りへ。後ろめたい何かに触れられた人間の心理がそのまま投影されたかのような情けない表情は、ピニオラの指摘を無言のうちに肯定するだけでなく、彼女の嗜虐心に油を注ぐ恰好の材料だ。このまま精神的に追い詰めてみても良いのだが、これ以上は無粋というものだろう。
喉が渇いたのか、焦燥を冷ますためか、手渡した瓶の中身を勢いよく呷る。
………だが、それでこの物語のギミックは完成してしまった。意外に楽しめた展開に満足しつつ、この場を後にしようとすると、背後から刃が鞘を滑る音が耳に届く。
『良いですねぇ〜。男の子はやっぱりこのくらい積極的じゃないといけませんよね〜』
『そんなことはどうでもいい!! ………この事は、誰にも言わないでくれれば良いから………!』
『この事ってぇ、今こうして《剣を突きつけられて脅されている》ことですかぁ? それともぉ、《助けられた筈のお仲間を見殺しにしてまでレアアイテムを選んだ》ことですかぁ?』
『聞かなくたって解るだろう!? ………どうして、こんなことに………』
『今更悲しんだところでどうにもならないんじゃないですかぁ? ………少なくともぉ、貴方は助からないでしょうし〜』
数度の問答。その末に、背後では剣が手から滑り落ち、青年が呻きながら床に崩れる。
それだけの時間があれば、ピニオラには十分だったのだ。
彼が飲んだ麻痺毒が作用するまでの時間稼ぎさえ出来てしまえば、あとはどうにでもなるのだから。
『今回、わたしは貴方たちに二つほどストーリーを見出したんですよぉ? 聞きたいですかぁ?』
『ストー、リー………だと?』
『一つ目は《努力の実らない男の子のシンデレラストーリー》なんですけどぉ、残念ながら空回りでしたねぇ。そして二つ目は貴方が主人公の《元攻略組の返り咲き大作戦》でしたぁ。当然のことながら攻略組に戻れず失敗なんですけどぉ………まぁ、知らないでもいいでしょ〜。………ということ
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