第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:柩の魔女
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ンスターと、それに黄色い声をあげる女の子達。助言を授けた彼も決して実力で劣るものはないのだが、やはり向けられる感情に差がある故に扱いにも歴然とした違いが見られた。それを確認したことで、今後の展開にさらに愉悦が込み上げる。
そして、ついに到着したレアアイテムの眠る隠し部屋。
それは彼女の常套手段である《嘘》ではなく、事実として存在しているれっきとした本当の証言であった。
その宝箱を見て、メンバーは様々な声をあげた。
少しだけ彼を見直す声や、明るい声で素直に褒めてくれるような声まであった。
それに気を良くした彼はリーダーの咄嗟の制止にさえ耳を貸さずに部屋の中心に眠る宝箱の蓋を開けたのだ。
その瞬間、部屋の扉は閉じ、内部からは警報のようなけたたましい音と、無数の雑踏、阿鼻叫喚の悲鳴が織り交ざった地獄と化した。続いてガラスの割れるような冷たい音が聞き耳スキルを通じてピニオラの耳に届き出す。プレイヤーの声はみるみるうちに少なくなり、最後には精悍な青年の叫び声と冷たい破砕音だけが残った。
やがて、隠し部屋から這う這うの体で抜け出してきたのは、リーダーだった青年一人だけ。室内には誰も残っておらず、あるものと言えば口を開いた空の箱のみ。状況は火を見るよりも明らかであった。そこにいるのは、仲間を失ったギルドのリーダー。きっと、誰もがそう思う光景であっただろう。
そんな彼がゆっくりと迷宮区の角を過ぎたところで、ピニオラは隠蔽スキルを解除して近寄った。
壁に手をつきながら、肩で息をする美青年を案ずるように、ピニオラは安全地帯へと彼を誘ったのだ。
『………大丈夫、ですかぁ?』
『君は、あ、いや………ありがとう、もう………大丈夫だから………』
傷心の横顔でさえ、ピニオラから見ても美形にあてはまる容姿であった彼。
ピニオラは、一本の瓶を取り出してからそっと手渡した。
『迷宮区に入っていくところを見てましたけどぉ、お仲間さんがいましたよねぇ………?』
『……………ッ!?』
思いやるような声色を意識したが、彼の表情には苦いものが見て取れた。
内心で笑みを零しつつ、しかし表情は努めて真剣につくる。感情をそのまま表情に浮かべてしまうSAOにおいて、この境地に至るのには並々ならぬ努力を要したのだから、演技には自信があった。だが、今回ばかりはいつものように表情を偽るのも難しい程に愉悦が込み上げてしまい、やむなく短期決戦とすることにした。
『無理をなさらないで下さいねぇ………悲しそうにするフリなんてぇ、つまらないでしょ〜?』
『な、なにを………!?』
『だってぇ、わたし知ってますもの〜。貴方が《元聖竜連合所属の攻略組さん》で
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