第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:柩の魔女
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中にあって足取り軽やかに進むローブ姿はさながら異彩を放っていた事だろう。周囲の少なからぬ奇異の視線さえ意に介することもなく、浮足立ったままに鼻歌まで交え、長い一本道を歩き抜いた彼女は迷いなく内部へと踏み込んだ。
目指すは黒鉄宮内部中央に鎮座する巨大な黒い金属の一枚板。その表面に刻まれた《プレイヤー》の名、或いは墓標か。
隣で誰かが声を押し殺して涙を流す姿さえ気にも留めず、目的である名が刻まれた箇所………
――――その上に重なるように刻まれた横線を、細くしなやかな指が撫でて通り過ぎる。
間もなくして、込み上げてくる愉悦と恍惚の入り混じった感情に堪えられず、彼女――――《ピニオラ》は床にへたり込む。
名を触れられた男性プレイヤーは、数か月前にダンジョンで命を落としたプレイヤーだった。
実直で、快活で、困った相手に手を差し伸べられる振る舞いの出来たその人物は、加えて中層プレイヤーでありながら片手剣士としての実力はとても優秀であり、おまけに容姿まで整った好青年だった。ともすれば最前線に居てもおかしくないものであったが、そんな人柄に惹かれた僅かな仲間と共にささやかなギルドを設立し、ボリュームゾーンにて頭角を示しつつも仲間との足並みを優先して中層域に留まり続けた。
その存在を知ったピニオラは、早速《彼のギルドのメンバー》である男性プレイヤーに接触した。リーダーと彼を除いて、そのギルドを構成する六名のメンバーは全て女性。更に言えば、リーダーである彼とは親しい間柄だったという。故にピニオラは彼を選んだのだ。当初はリーダーを賛美するような言葉が並ぶものの、少し発破を掛けただけで意見は一変したのだ。
――――才能の差、容姿の差、度量の差。
第一層を抜け出した頃からの親友だと思っていた彼は、しばらく見ない間に実力を開花させ、自分さえ遠く及ばない場所にいたという。それでもギルドに誘ってくれたから加入してはいるものの、今思えば、リーダーは俺をギルドの女達からよく見られる為の、体の良い対比に置いているのではないか。そんな嫉妬と猜疑心を零したのである。
そこでピニオラは彼に一つだけ助言を与えた。
彼等の狩場から二層上の迷宮区、そこに隠された隠しアイテムの眠る宝箱を、位置情報を添えて教えたのだ。
――――例え二層だけ上の層だと言っても油断しないように。
――――向かう気があるならば、リーダーを見返す気があったとしても、ギルド全員で向かうように。
この二つの忠告を彼は見事に鵜呑みにして、レアアイテム情報を仕入れたという手柄を証明する為に、攻略はその翌日に行われた。当然、ピニオラもその後を追跡したが、その先で見たものはリーダーの鮮やかな剣技で倒されるモ
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