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八神家の養父切嗣
五十四話:全て遠き―――
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が苦しみながらも信仰を続ける様に狂喜するようなものだ。今の彼はまさに“神”の如き気分であった。人間を自由に操り慈しむ(弄ぶ)のは神の特権。その極上の快楽を今まさに彼は味わっているのだ。そんなどこまでも人を馬鹿にした生き方、在り方になのはは激怒した。

「ジェイル・スカリエッティ―――今ようやくあなたを外道と理解しました」
【それは光栄だね。私は災いをなす者であり、悪魔であるからね。外道で当然さ】

 先程までの死闘が嘘だったかのように静まり返る玉座の間。しかし、なのはから発せられる冷たい闘気が場を満たしその場に居ないスカリエッティを射殺さんと研ぎ澄まされる。だが、当の本人に届くことはなく、また届いたとしてもその程度でどうにかできる相手でもない。

「すぐにあなたを捕まえに行きます。覚悟しておいてください」
【ほう、それは楽しみだ。では、そんな君に最後に良いことを教えてあげよう。ゆりかごを止めたところで運命は変えられないよ】
「……どういう意味ですか?」
【そのままの意味さ。あの器は偽物。だが、私も世界を塗り替えること自体は目的としていてね。そうであれば……後は分かるだろう?】

 嫌らしい笑みが簡単に連想される声でスカリエッティは暗に告げる。本物の聖杯、もしくは同等の能力があるものが既に彼の手の中にあるということを。そして管理局側が本命と思い込んでいたゆりかごは“囮”であったということが。

「だとしても、今からあなたを探し出すまでです」
【くくく、そうでなければな。舞台が盛り上がらない。だが、その前に一つ余興と行こうじゃないか。クアットロ、後は任せたよ】
【はーい。しっかりと承りましたわ。では―――陛下、お目覚めの時間ですよ】

 通信が切り替わりこれまた残忍で楽しそうな笑みを浮かべているクアットロに代わる。彼女もまた捕まえなければならない存在だと思い出すなのは。しかしながら、その思考はわが子の悲鳴により一瞬でかき消される。衝動的に顔を向けたその先には体から明らかに子供の身には釣り合わない大量の魔力を放出し苦しんでいるわが子の姿があった。

「ヴィヴィオ―――ッ」
【さぁ、陛下。周りの人達はみーんな陛下のママを苦しめるわるーい人達ですよ。だからぁ―――全部(・・)壊しちゃいましょう】

 聖王家の特徴である虹色の魔力が目を焦がすように輝きヴィヴィオが姿を変える。小さかった体は成人女性のものとなり、その身にはかつて聖王オリヴィエが身に着けたとされる黒き鎧が纏われる。そして憎しみだけに染まった瞳。娘の変わり果てた姿に思わず声を失うなのは。

【では、親子水入らずで楽しんでくださいねぇ】

 愛し合う者同士が殺しあう光景にどこまでも邪悪な笑みを浮かべながらクアットロは通信を切る。そしてディエチに念話を飛ば
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