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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三話 同じ道
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いる。そう、これは帝国内の社会経済改革の研究なのだ。



今でも覚えている。六月の下旬、私とブラッケはヴァレンシュタイン司令長官に呼ばれた。


「新領土の統治体制がどうあるべきか研究せよ、ですか」
「そうです」
「失礼ですが新領土とは一体何です?」

私の質問に司令長官は少し眼を見開いた後、可笑しそうに笑いながら
「そうでした。肝心な事を説明していませんでした。新領土とは反乱軍、いや自由惑星同盟の事です。帝国が同盟を占領した時、帝国は新たな領土をどう統治すべきかの研究をお願いしたいのです」
と言った。

自由惑星同盟? 何故私が自由惑星同盟の統治体制を研究しなければならない? 今大事なのは帝国の改革をすることだ。大体イゼルローン要塞を失った今、同盟の占領などできるはずがない。実現するかどうかも分らない事の研究など出来るか!

私の感じた怒りをブラッケはそのまま口に出した。
「閣下、今大事なのは帝国の社会を改革することです。そんな何時実現するかも分らない事になど協力は出来ませんな」

ブラッケの憤懣交じりの言葉にもヴァレンシュタイン司令長官は少しも不機嫌な表情を見せなかった。穏やかな微笑みを浮かべながら聞いている。少し拍子抜けした。ブラッケも同様だったろう。

「もし同盟を占領したとして、今の帝国の統治体制をそのまま当てはめる事が出来ると思いますか?」
「?」

妙な男だ。協力できないと言っているのに……。仕方ない、少し付き合うか。私はブラッケと顔を見合わせてから答えた。
「いや、出来ないでしょう。政治体制が余りにも違いすぎます」

「そうですね。おそらく百三十億の人間が暴動、内乱を起す事になる。今度こそ本当に反乱軍になるでしょう」
「……」

「反乱を起させないためには帝国と違った統治体制をとらざるを得ない。それは帝国本土よりもかなり開明的なものになるでしょうね」
「……」

この男は一体何が言いたいのだ? 彼の顔には相変わらず微笑が浮かんでいて少しも読めない。
「そうなった場合、帝国本土の人間はどう思うでしょう?」

どう思う? どう思うのだ……不公平感は持つだろう、何故占領地のほうが恵まれているのかと……。恵まれている? まさか、そうなのか? そんな事を考えているのか?

私は目の前の男を呆然と見つめた。彼は優しげな微笑を浮かべたままだ。そして私が達した結論を口にした。
「同じ権利を自分たちにも寄越せと言うでしょうね。勝ったのに何故自分たちのほうが酷い扱いを受けるのかと。拒絶すれば今度は帝国本土で暴動が起きる」

つまり新領土の統治体制の研究とはそのまま帝国の社会改革に繋がると言う事か。同じコインの表と裏だ。帝国内から変えるのではなく帝国の外から変える。そんな発想が
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