第二章 水入らずの旅
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た。
他にチェックインした客は居ないようで、廊下はしーんと静かだ。
風呂の入口にかかった札を“使用中”に裏返し中へ入る。
カゴにタオルを置いて、脱いだ衣服を入れていく。
《うわ、久々に見たな。祐未の裸…》
(いいわよ、じっくり見てちょうだい。)
《あ、首の辺りが赤いよ。》
(え?)
《お湯に入ったら痛そうだなぁ…》
(やだぁ、そんなに?)
壁の鏡に背中を映すと、首から肩にかけて赤く日焼けしていた。
どおりでヒリヒリするわけだ。
(しまった… 日焼け止め塗っておくんだった。)
《祐未は肌が白いから、すぐ赤くなるんだよな。》
浴室に入ると細かいタイルが足裏のツボを押してくる。
L字型の浴槽には余裕で5〜6人は入れそうだ。
(さ、汗を流しましょう。)
白肌に手桶の湯をたっぷり這わせ、静かに湯の中へ足を沈める。
肩まで浸かれば、やわらかい湯に体の芯からほぐれた。
(はぁ〜、気持ちいい。ちょっとしみるけど…。)
《ああ〜、いい湯だねぇ。
やっぱり風呂はこうして、足を伸ばして入るのが一番だね。》
窓から下りてくる涼風が湯気に当たると、白い粒が小さく渦を巻く。
その中に、白い歯を見せながら笑う陽介の顔が見えた気がした。
「陽介…。ちゃんとそこに居るのね。」
嬉しさと寂しさが入り乱れ、
笑顔の目から、涙がぽとりとこぼれ落ちた。
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