第百十一話
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浮遊城の一角――開けた草原の近くにある森の中、かつても活動拠点として使われていたそこに、彼女は鼻歌を嗜みながら帰還した。シルフ特有の翼を畳みながらグウェンが、森のある場所に着陸する。
「ごきげんよう、ルクス。調子はどう?」
「グウェン……」
そしてはちきれんばかりの笑顔を見せながら、木々に縛り付けられたルクスへと話しかけた。近くの仲間たちは下卑た笑みを隠さずにいて、これから起こることを楽しみにしているようだ。
「グウェン……話を、聞いてくれ」
「話ならもう聞いたじゃない。私たちの仲間になりなさい、って」
昔の経験からこの活動拠点を知っていたルクスは、先日に単独でグウェンたちの前に現れていた。また楽しくやろう――と歓迎したグウェンに対して、ルクスはぺこりと頭を下げて『私はもうこのゲームを引退するから、みんなには迷惑をかけないでくれ』とのたまった。
――またルクスと楽しく遊びたいのに、引退なんてされちゃ遊べないじゃない。真摯なルクスにそう返答したグウェンは、仲間たちに命じてルクスを捕らえた。どうやっても身動きが取れないように、自らの手でログアウト出来ないように……とはいっても、この『不完全な世界』じゃ、完全にログアウトを封じることは出来ないわけだが。
それでもルクスは、まだこうしてこの場にいたままだ。ようやく話が分かったかと思えば、彼女はまたも苦しそうにグウェンを見上げていた。
「グウェン……話を……」」
「……ハァ」
壊れたラジオのように『話を聞いてくれ』と繰り返すのみのルクスに、グウェンはついついため息を吐いた。これから起こることが成功すれば、そういう訳にもいかないだろうが、そろそろこの問いにも飽きてきた。
「ねぇルクス。私ね、さっき、あなたのお友達のところに会ってきたの」
「えっ――」
ようやくルクスの表情に驚愕の色が浮かび、拘束から逃れようと抵抗を始めていた。ただし決して拘束が解けることはなく、グウェンはようやく人間らしさを取り戻したルクスを見て、歓喜の色を浮かべて近づいた。
「それでね、ね――」
「――グウェン」
喜び勇んで拘束されたルクスに近づいたグウェンだったが、目の前の恐ろしいほど冷たい声と表情を見て、ピタリとその動きを止めていた。それは今までに見たことのないルクスの表情で、その表情に浮かんでいる感情は、見紛うことはなく怒りの感情で。
「みんなに……手を出さないでくれないか」
「ふん……何よそれ、つまんない」
口調こそは今までと同様に丁寧なものだったが、底知れぬ威圧感を伴ったルクスに対して、グウェンは少し驚きながら後退する。彼女に対して脅えている自分を自覚しないままに、グウェンに一つの伝令が届いた。
「団
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