第百十一話
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局は俺の目の前に来るのは正面だ。頭を少しズラしてその投擲物を避け、何が飛来してきたか確認すると――円形の投擲用武器、チャクラムが木の幹に刺さっていた。
厄介だな、と他人事のように思っていると、俺の真上にある木々の枝がざわめきだした。何かの比喩表現という訳ではなく――物理的に、太短様々な木の枝が、俺を押し潰さんと落下してきた。先のチャクラムは俺に攻撃した訳ではなく、俺の直上にある木の枝を狙っていたのだ。
迫り来る丸太のような木の枝を前にして、俺は柄にアタッチメントを装着していく。刀身に属性を付与するアタッチメント――今回装填するのは風、《疾風》のアタッチメントであり、柄の中に仕舞われた刃が旋風を纏っていく。
「セィッ!」
そして抜刀術《十六夜》による一撃は、柄の中に渦巻いていた旋風が解き放たれ、さながら小型の台風のように現出する。俺自身が台風の目と化した疾風は、迫り来る木々をどこかに吹き飛ばしていき、そんな木々とともに襲おうとしていたらしい、丸太に隠れたフード付き妖精を、抜刀術とともに放たれたカマイタチが両断した。
「……よし」
思っていた以上に上手く言ったことに頷きながら、台風の爆心地のようになった森で満足げに微笑んだ。《疾風》を生じさせるアタッチメントを鞘から排出すると、日本刀《銀ノ月》を右方向に向けて引き金を引く。鈍重な音とともに発射された刀身は、《疾風》によって薙ぎ倒された邪魔な木々をすり抜けて、逃げようとしていたチャクラム持ちのフード付き妖精の肩部に炸裂する。肩から先を吹き飛ばさんとするような一撃が炸裂したが、幸いにも、肩に貫通して腕が使い物にならなくなっただけで済んだようだ。
「くそっ! ……あっ?」
残る片腕で果敢にもチャクラムを構え、逃亡するだけの隙を作ろうとする男の視界には、もはや俺のことは移っていなかっただろう。……眼部から一刀両断されては、見えるものも見えないに違いない。血を振り抜くように――ポリゴン片が血というならば、血に間違いはないだろうが――新たに生成された日本刀《銀ノ月》の刀身を振り抜き、この森に生まれた六つのエンドフレイムを数えた。こんな地形が変わるほど暴れてしまえば、もう闇討ちとかいう問題ではなく――俺を待ち受けていたように、グウェンを除いた残り三人が姿を現した。
「お前……」
例外なく姿や得物を隠すためのフードを被っていたが、そのうちの1人だけは様子が違っていた。フードというよりはマントを着用しており、顔を隠すためのフードもそのニヤケた笑顔のみは隠さない程度の丈だ。明らかに格好の違う一人や、随伴する残り二人のフード付き妖精とは違う泰然自若とした動きから、そのVR慣れを伺わせる。グウェンの次のPK集団の副長とも思ったが、確か副長と呼ばれていたプレイヤー
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