第百十一話
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長殿ぉ、サラマンダー見つけたってよ」
「あら、随分と早いのね」
その伝令を伝えてきたのは、この世界で団員にした使い捨てのプレイヤーたちとの、連絡係となっていたプレイヤーだ。近くにある開けた草原に待機させている、使い捨てのプレイヤーたちがサラマンダーを発見したらしく、グウェンは正直な感想を漏らした。するといつもの調子を取り戻しながら、ルクスに向かって指を突きつける。
「さあ、始まりよルクス。これからこの世界は……巻き戻るんだから」
グウェンが言った通りの、この世界を旧アインクラッドに戻す計画。ルクスを自分たちの仲間にしながら、かつての《笑う棺桶》の如き暗躍を繰り返す。ひとまずはサラマンダーにルクスをリーダーと認識させた後、使い捨てのプレイヤーたちを囮に、サラマンダー領軍を闇討ちと返り討ちにするところからだ。
「それじゃあルクス。まだ会いましょう……さ、連れていって」
その為には、ルクスは使い捨ての囮たちと一緒にいなくてはならない。木々から拘束を解かれた彼女は、仲間の一人によって所定の場所に連れ去られていく。それを投げキッスで見送るグウェンを、遠くから薄ら笑いで眺める、一人のプレイヤーが――いた。
「ねぇあなた、これでいいのよね?」
ルクスを最後まで見送ったグウェンが、その遠巻きに眺めていたプレイヤーに問いかけた。グウェンは中層でオレンジプレイヤーとして活動していたため、攻略前半の《笑う棺桶》の前身による攻略妨害など、彼女にとって知る由もない。しかして、何故それを模した計画を建てられたかと言えば。
「…………」
その男はグウェンの問に対して、肯定の意を示すようにニヤリと笑った。手にはナイフが握られており、戦闘中でもないというのにフードを目深に被って顔を隠していた。
「……なら、いいわ。みんなも準備した位置に着いてね」
薄気味悪い奴――と聞こえないように吐き捨てると、グウェンは用意してあった『特等席』へと歩いていく。あくまで彼から発案されたルクスを仲間にするための策を利用しただけで、グウェンは元から欠片もその男を信用していなかった。
……そんな様子こそを面白そうに、男はニヤリとグウェンを見つめていたが。残っていたメンバーも三々五々、グウェンに倣って自分たちにそれぞれ用意してある、『特等席』に移動していく。
「さて……ナイスな展開に、してやろうじゃないか」
――その光景を、日本刀を帯びた黒衣の青年が、端から見ていることに気づかないままに。
……セブンからの情報に従って浮遊城のある層に到着した俺たちは、まずはPK集団がいるという場所から離れた場所に着陸した。何の策もなしに突撃するほど無計画ではないが、そう悠長に計画をたてている時間がないのも確かだった。
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