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Three Roses
第三話 幸福と孤独その十二

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 マイラは一人であり続けた、三人と一人のままでだ。彼女達は育っていった。
 やがてだ、マリー達の背丈が侍女達と変わらない様になり太子が十五になったその頃にだった。王は病に伏せる様になった。
 その病の床の中でだ、王は枕に立つ大公に言った。
「太子を王と為せ」
「わかりました」
 大公は兄王の言葉に頷いて答えた。
「その様に」
「後見人はそなたにする」
 大公自身にも言った。
「その様にな、だが太子は身体が弱い」
「はい、どうしても」
「あれが子を残せばいいが」
「その前にですね」
「若しものことがあれば」 
 その時はというのだ。
「そなたが王になれ」
「そのことですが」
 大公は自身が王になることについてはこう王に言った。
「私よりもです」
「マリーか」
「第三位ですし」
 その継承権がというのだ。
「ですから」
「そなたは二位だが」
「いえ、あの方ならば」
「この国を正しく導けるか」
「私はそう思います」
「そうか」
「あの方を」
「確かにマリーはな」
 父である王から見てだった、彼女については。
「学問が好きで教養がありだ」
「人を惹きつけるものもお持ちで」
「芯に強いものがある」
「忍耐強くまた慎重な方です」
「王となるに相応しいな」
 王は自ら言った。
「そうだな、しかしだ」
「姫君であられるからですか」
「女王は少ない」
「大陸においても」
「そうはいない、旧教も新教も女は男の下に置いている」
 どちらも同じ宗教で宗派が違うだけだ、根本である宗教がその教義において女を男の下に置いているのならこのことは変わりようがないことだ。
 それでだ、王も言うのだ。
「それだけでだ」
「女であるならばですか」
「王にはなりにくい」
「それ故に少ないですね」
「だからだ。あの娘はだ」
「王にはですか」
「無念だ」
 こうもだ、王は言った。
「マリーが男子でないことだ」
「若し男子ならですね」
「ジョンよりもあの娘を太子としていた」
「お身体も丈夫ですし」
 太子であるジョンは病弱だ、よく床にも臥せっている。このことが王にとっても悩みの一つであるからここでも大公と話しているのだ。
「ですから」
「そうだ、あの娘が男だったなら」
「今もそう思われていますか」
「心からな」
「しかしマリー様なら」
「女であってもか」
「そう思います」
 大公は是非にとだ、兄である王に言った。
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