第三話 幸福と孤独その九
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「君主はみだりに命を奪うな」
「その者の命のことを考えよ」
「そう書いてあるけれど」
「そうね」
マリアはマリーのその言葉に頷き言った。
「本当にその通りね」
「そうね、人の命は重い」
「誰のものであっても」
「軽く扱っては」
マリアも言う。
「決してならないものね」
「農民、職人、羊飼い」
マリーは職業から話した。即ち階層から。
「それに旧教徒も新教徒も」
「無闇に人を処刑していけば」
「その人の周りが悲しむわね」
「ええ、それに」
しかもとだ、マリアもまた言う。
「人を処刑してばかりだと人がいなくなるわね」
「そうもなるわね」
「だからなのね」
「ええ、私も思ったわ」
まさにというのだ。
「人は無闇に処刑をしてはならないわ」
「人の命は重い」
「そのことを理解して」
「そうですね」
セーラもここで頷いた。
「人の命は重いです」
「ええ、誰のものであってもね」
「だからですね」
「裁きを下せる立場であっても」
それでもというのだ。
「処刑を命じるべきではないわ」
「おいそれとは」
「そうしないといけない時もあるわ」
まだ子供であるがマリーは聡明である、その為こうしたこともあるとわかっている。それであえて言ったのである。
「けれどね」
「そうした時でもない限りは」
「奪うべきでない命はね」
「奪うべきではありませんね」
「そのことがわかりました」
まさにというのだ。
「今日でさらに」
「そうね、そういえばマリー様は」
「私は?」
「今日はお言葉遣いが違いますね」
「そうかしら」
「大人の方のものになっています」
「そうしたつもりはないけれど」
ここでようやく自覚した、自分の言葉がそうなっていることに。
「けれど」
「はい、それでも宜しいでしょうか」
「構いません」
マリーは微笑み自分の考えを述べた。
「それでどなたも気分が悪くなるものではないので」
「真面目に、そうでなければならないことを考えていますと」
セーラも言う。
「そうなればですね」
「そうかも知れないわね」
「言葉にも出ますね」
「そうかも知れないわね」
「左様ですね」
「ええ、今は戻っているわね」
「はい」
その通りだとだ、セーラはマリーに答えた。
「いつものお言葉に」
「そうなのね」
「お言葉遣いは王妃様で」
既に亡くなっているマリーの、そして太子の母にというのだ。
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