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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第四四話 背水の陣
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ある彼ならば、立場で人を見ることはない。そんな彼だからあの子も惹かれたのだろうと容易に想像できる。
 部下か、伴侶か、その違いはあれど確固たる個としての自分を見てくれる人間、立場や諸々は付録に過ぎない、そんなものには興味がない。

 そう言ってくれる人間がいればな、と思わずにはいられなかった。





「やぁ、久しぶりだね恭子。登志道老はお元気かな?」
「ええ、元気過ぎて困るわ。縁側でお茶でも飲んでもらっているほうが気が楽のだけど。」

「はっはっはっは―――老いてなお健啖とは、まったく羨ましいな。」

 含み笑いと共に恭子の言葉を反す同じく蒼き軍服をまとう男―――斑鳩崇継。
 恭子ともども、その言葉には正反対の意味が含められている。
 ……つまり、意訳すると

 ―――さっさと逝けや老害―――

 である、恭子を当主に祭り上げて政威大将軍の地位を回避したのは他でもない嵩宰登志道・……恭子の祖父である。

「貴方までそうなったら手が付けられないでしょう、程々で身を引いてほしいモノね。」
「―――老年になってまで閣下に振り回されるのは骨が折れそうで少々怖いですが、」

「―――でしょうね。」

 恭子の言葉にため息をこぼした赤の斯衛、真壁助六郎の言葉に思わず相槌を打つ恭子。こればっかりは如何な他意も存在しない本音であった。

「それよりも、己たちを集めた本題に入ってはどうだ?挨拶はもう十分だろう?」

 部屋を眺め渡す蒼き軍服を纏う隻腕の斯衛、彼の後ろには少年と呼んで差支えの無い斯衛、真壁清十郎と、白き雷切の異名を持つ白き斯衛の双璧、甲斐朔良と今井智恵の三名。

「そうだな忠亮。真壁、例のものを。……まずはこれを見てほしい。」

 自らの義弟となった忠亮に頷くと助六郎に合図を送る。
 部屋が暗くなり、スクリーンが天井から降りてくるとプロジェクターが起動し図面を投影した。

「これは……戦術機の設計図?」
「まさか―――いや、そんな馬鹿な。」

 首を傾げる恭子、それとは対照的に信じられないモノを目に表情を強張らせる忠亮。

「貴方、これが何か知っているの?」
「ああ、知っているも何も―――これは己がかつて篁中佐に進言した次期戦術機の概念図だ。」

「……どういうこと?」
「私と彼は元々、零式(タケミカヅチ)の開発衛士を担当していた―――それは知っているな?」


 恭子の疑問を引き受けたのは崇継だった。
 その実戦試験のために京都防衛線に投入されるはずが尻込みした城内省によって東京に運ばれそうになったのを借り受け、唯依たち学徒兵の救助を引き受けたのが自分なのだから恭子が知らぬはずはなかった。


「ええ、3年前のことは忘れるわけないわ。」
「その開発
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