第6章 流されて異界
第143話 災いなるかな……
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安心感と言う物を覚え小さく首肯く俺。
確かに、色々な解釈が存在している赤き衣……太陽を纏ったなどと表現される衣装なのだが、こう言う直接的な物の可能性もあるのか。何にしても、普段は割とシックな色合いのコーディネイトが多いハルヒが、今日に限って紅などと言う派手な色合いのセーターを選んだ事自体が、神話の影響の可能性が高い。
……と言う事なのだと思う。
「そんなの決まっているじゃないの」
口調は普段通り。そのまま、何故か俺の頭の上の方に手を伸ばすハルヒ。
ゆったりとしたニットのセーター故に分かり難いけど、俺のプレゼントした銀の首飾りが頭の上に存在し、目の前には漢の夢と浪漫が詰まっているらしいふたつの……。
こいつ、今の体勢をちゃんと理解しているのか?
しかし、ここは現実の世界。まして、俺の目の前にあ……居るのは涼宮ハルヒであって、色々とうっかりの多い朝比奈さんなどではなく……。
つまり、ラッキーなイベントで俺が夢と浪漫に包まれる事もなく、
「あたしが暇だったからに決まっているでしょ」
其処に置いてあったらしい紙袋を手に、再び、元の場所に女の子独特の座り方で坐り直すハルヒ。
もう、色々とツッコミ所が多くて、最初に何処からツッコミを入れるべきか非常に迷う状態なのですが……。
「取り敢えず、実家に帰らせて貰っても良いかな?」
所謂、性格の不一致って奴?
ハルヒの押しつけて来た紙袋の中を右手のみでごそごそと確認しながら、軽く小首を傾げてそう言う俺。その時、未だ動きの悪い関節がそれまでと違う動きに対してコキコキと成った。
しかし、布団に仰向けになったままでは、非常にやり難い事、この上ない。
「くだらない事を言ってないで、さっさとそれを食べちゃいなさい」
そもそも、あんた、何時の間にあたしの嫁になったのよ。
そう言いながら、ようやく美少女によるマウントポジションと言う、嬉し恥ずかしな状態からは解放してくれるハルヒ。
しかし、早く食べちゃいなさいって……。
上半身だけを起こしながら、紙袋から取り出した代物を無言で見つめる俺。
…………って、
「なぁ、ハルヒ。これから俺は犯人を追って、張り込みにでも出かけなくちゃならないのか?」
湯煙なんとか、とか、温泉若女将なんとか、とか言うサブタイトルが付いた二時間ドラマのように。
最後のシーンは矢張り断崖に犯人を追いつめるパターンが多い。
紙袋から取り出した二つの物体。ひとつは一辺が十五センチ程度のビニール袋に包まれたアンパン。そして今ひとつは、いまどきアレな瓶牛乳。普通に考えると、この組み合わせは何らかの事件が発生した挙句に、夜の張り込み中の刑事に差し入れられる夜食。
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