第6章 流されて異界
第143話 災いなるかな……
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しに来るので、流石にここまで見苦しい状態にはならない……と言うか、もっと寝惚けた状態のような気もするが。
しかし……。
何故か、その言葉を聞いた瞬間、動きが止まるハルヒ。しかし、次の瞬間、
冷たい金属製の物体が右の頬に当たる感触。これはおそらく、ハルヒが首にかけた銀の十字架。
そして、
「本当に目覚めのくちづけをしたら起きるって言うのね?」
再び仰向けにされる俺。その俺の顔に掛かる彼女の黒髪。そして強く香る……花の香り。
言葉は疑問形。ただ、口調はほぼ断定。まして、その言葉が発せられたのは右の耳のすぐ傍。彼女の吐息と微かな温もりすら感じられるぐらいの二人の距離。
……普段の彼女からは感じる事のない、酷く淫蕩な気配。
少し冷たい……。しかし、何故か妙に熱のこもった感覚のある彼女の指先が、俺の頬から顎に掛けて、そっとなぞった。
………………。
災いなるかなバビロン。赤き多頭龍が現われたかと思えば、その日の内に大淫婦バビロンとなったかも知れない少女が、俺に馬乗りになるとはね。
一気に眠気も吹っ飛び、僅かに自嘲にも似た笑みを口元にのみ浮かべ、何処まで祟るのか分からない神話の追体験に対して、心の中でのみあらん限りの呪いの言葉を投げ掛ける俺。
もっとも、こいつがまたがるべきは七つの首に王冠を被った十の角を持つ赤き龍。俺は残念ながらひとつの首しか持って居ない、更に言うと未だ王冠も頂いて居ない蒼い龍。
それとも、この状況は、英雄王ギルガメッシュを誘惑するシュメールの女神イシュタルの神話の方を擬えているのか?
「分かった、もう起きても良い」
ただ、せめてその俺が起きなくちゃならない明確な理由と言うヤツを教えてくれ。
現在の状態の危険度を改めて認識。今のハルヒが、普段の一歩引いたかのような……俺が追い掛けて来る事を望んで、ある一定の距離から踏み込んで来ない態度を一変。妙に積極的な態度に出た理由が、彼女の本心なのか、それとも、彼女の後ろに憑いている存在の意志なのかを見極めなければ、未来にまた何らかの危険な事件が起きる可能性がある。
少なくとも今の彼女はおかしい。確かに俺に対しては少し……かなり強引な部分を見せる事もあったけど、それは俺が受け入れた時だけ。一度拒否すれば、それ以上、しつこく突っ込んで来る事はなかった。
覚悟を決め眠気を無理に跳ばし、再び、馬乗りとなった彼女を見つめる俺。
メガネで補正されない裸眼視力で見つめる彼女は少しソフトフォーカス。下から見上げたそのくちびるはやけに紅く、明るい照明がまるで後光のように彼女の容貌に奇妙な陰影を形作っていた。
……成るほど。現状は、のっぴきならない状況と言う感じなのだが、その中でも尚、妙な
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