第6章 流されて異界
第143話 災いなるかな……
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代物なのだが、彼女のそれは、どちらかと言うと逆のサイドの品。奴らが言うには悪魔の一種。俺の式神、土の精霊ノームが作り出し、そこにアンチキリストの象徴、龍種たる俺自身が気を籠めた一品物。
ゆったりとしたセーター故に、少し起伏の分かり難い胸から、タートルネックに包まれた紅の部分と、本来の肌の白い部分の境界線の印象が強い咽喉。そして、こちらの世界に帰って来てから見慣れた彼女の顔……悪戯が見付かった小さな子供が浮かべるような表情を浮かべているハルヒと今、視線が交わる。
……成るほど。
「……おはようさん」
俺が寝ている布団の上に何故か馬乗りになっているハルヒ。その彼女を少しの間、寝惚け眼で見つめた後に、目覚めの挨拶を口にする俺。
ただ、ぼんやりと、これで昨夜の約束が果たせたのかも、などと考えていたのですが。
「ちょっとあんた、この状況をみて、何でそんな太平楽な反応しか示せないの?」
呆れたようにそう言いながら、鼻先に右手を突き付けて来るハルヒ。その右手に握られた黒のマジックが嫌な臭いを周囲に撒き散らす。
しかし、その右手を大きく振った瞬間に、黒の長い髪の毛が穏やかな生活感のある電球色の光の中で揺れ……。
一瞬だけ、この異常な状況に対して感謝に近い感情を抱かせて貰った。
しかし、それも本当に一瞬の事。少なくとも、柔らかそうな紅のニットのセーターと、彼女のメリハリの利いた容貌。そして、長い黒髪が揺れたその様子に心を奪われ掛けた事を気取られる訳には行かない。
まして、布団越しに感じる彼女の温かさが妙に艶めかしく、更に言うと彼女の重さを強く感じて居る両腕の状態から、本来ならばさっさとどいて欲しいのは事実……なのですが……。
「その右手に持っとるマジックの事なら演出が過剰すぎるわ」
そもそも、人の腹の上であまり動き回るなボケ。中身が出たらどないするんや。……とツッコミを入れようかと考えたのですが、よくよく考えてみると朝から何も食って居ない腹の中には当然、何も入って居らず、出したくても何も出せない事に気付いたので、こう言う答えに留める。
「それに、良く考えてみろハルヒ。オマエが目を覚まして、その時に俺がお前の布団の上に今、正にキャップを外した状態のマジックを持って居る状況を。これが口紅か何かなら、流石に慌てたかも知れへんけど、油性のマジックで寝て居る俺の顔にオマエが落書きなんぞする訳がないでしょうが」
少なくとも、その程度の信用ならしているぞ。
そう、言いながら、かなり嫌いな臭いに部類出来る突き付けられたマジックを、無理矢理に布団の中から引き抜いた右手で鼻先から動かす俺。どうでも良いが、最初に身体の動きが悪かったのはハルヒが布団の上に座り込んで居たからであって、別に金縛りなどではなか
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