第6章 流されて異界
第143話 災いなるかな……
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の蕾の状態でありながら、この状態。正直、二年後、三年後の彼女がどう言う成長を遂げているのか。それが知りたいようであり、同時に知りたくないような、何と表現して良いのか分からない微妙な気がして来る少女。
「ちゃんと眠る事は出来たか?」
昨夜、この部屋を出て行った時の彼女の様子は矢張り異常だった。まぁ、確かにあの話……。俺と夢の世界で出会った出来事が、下手をすると世界の滅亡と直結する事件で、その事件を起こしたのが邪神に選ばれた自分。そして、二カ月ぶりに夢の世界で出会った俺が、最悪の場合は彼女の生命を奪うかも知れなかった可能性があった。
更に、その時に俺が口にした内容は、……もしもオマエが望むのなら、ずっと共に生きて行ってやる、と言う意味の台詞だった事が分かったのですから。
話の辻褄は合って居るけど、俄かに信じられる内容ではない。
但し、その内容を完全に否定するには、彼女の胸を飾る銀の光が自己主張を続け過ぎている。
――夢の出来事が真実の出来事だったと言う事を。
しかし、少女……涼宮ハルヒと言う名前の少女は、その整った鼻梁を僅かに歪め、薄い唇を引きつらせて、
「そんなの無理に決まっているじゃないの」
普段通りの、少し不機嫌な口調でそう答える。
……俺の予想とは正反対の答えを。
「こんな、あんたの臭いの染みついた場所で、ゆっくりと眠れる訳はないのよ。初めから」
俺の臭い?
コイツ、また失礼な奴やな。言うに事欠いて本人の前でオマエは臭いなどと言うとは。……と、普通ならば怒るトコロ。
しかし、
「そうか、それはすまなんだな」
少し肩を竦めて見せながら、一応、謝罪の言葉を口にする俺。但し、これは本心からの言葉ではない。
……と言うか、そもそも、眠れなかったと言うハルヒの言葉自体が眉唾物。
何故ならば、今の彼女が発して居る雰囲気が睡眠不足と言う雰囲気ではないから。それに、俺の体臭が染みつくほど、この部屋で長い間暮らして来た訳ではない。
この部屋に滞在したのはせいぜいが数時間程度。まして、その直前に風呂に入っているのに、それほど濃く香りを残せる訳がない。
臭いと言うのなら、畳や和室が発して居る木の香りの方が圧倒的に強いはず。
自らの縄張りを作る野生動物じゃあるまいし。
「その辺りに関しては無事に帰って来た事でチャラにしてくれると助かるかな」
一度視線を自らの手に移してから、対面に座るハルヒに移す俺。一般人の感覚から言うと、両腕の二の腕から先をすべて包帯で覆った状態で戻って来る事を、無事に、などとは表現しないような気がしないでもないのですが……。
……でも、生命までは失わなかった。病院のベッドの横に呼びつけるような結果に
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