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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第143話 災いなるかな……
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 和室に相応しい、落ち着いた電球色の灯りに照らし出された部屋。その中心に坐する二人。

 俺を見つめる少女。
 とても愛らしい少女……と表現出来るだろうか。身体はそう大きい方ではない。しかし、彼女自身が発して居る存在感と、鮮やかな紅のニットのセーター。ここに豊かな長い黒髪が、和室に相応しい柔らかな電球色の明かりに良く映えていた。
 更に、かなり整った。但し、一目見て分かる気の強そうな顔に瞬く両の瞳。

 類まれなる美少女、……と言う表現が相応しい少女であろう。
 ――黙って其処に存在していた、のならばだが。

 瞬間――
 この部屋に帰り付いた時からずっと繋ぎ続けられて来た会話が、ふと途切れた。
 その間隙をまるで埋めるかのように、漂う花の香り。
 これは――
 香りについてそう詳しい訳でもない俺に取って、ソレは何の花なのか分からない香り。しかし、決して不快な感覚ではない。

 まるで眠りの国から漂って来るかのような不思議な香りに、視線のみで室内の確認を行う俺。

 但し、本来休業中のこの和室の何処を探しても生花など見付け出す事が出来る訳はない。これは、おそらくこの目の前の少女自身が発して居る香り。
 コロンか、香水か、それともシャンプーの香りか……。

 そう考えた瞬間、込み上げて来る欠伸を無理にかみ殺す俺。一度瞳を強く閉じ、再び開いた時には目じりに少しの涙を感じた・
 う〜む、こりゃ沈没も近いな。
 流石に徹夜明け。オマケに前日も睡眠は仮眠程度しか出来なかったので、危険な事件に巻き込まれた事により幾ら気が張って居たと言っても体力的にはそろそろ限界。
 ……と言うか、俺に取って睡眠と言うのは非常に重要。現実世界はゲームの世界などと違って、飯を食った程度でマジックポイントが回復したり、怪我が治ったりするような訳には行かない、と言う事。

「それでハルヒ――」

 ただ、未だもう少しの間だけ、気力を充実させて置く必要がある。この問いの答えを聞くまでは。そうやって、部屋に無事帰り着いた事で少し緩み掛けた自らにもう一度気合いを入れ直す。

 障子越しに差し込んで来る光を背にする彼女。その紅のニットが奇妙な生活感を。しかし、長く豊かに波打つ黒髪。それが彼女の背中を覆わんがばかりに広がる様は……正直に言うととても美しいと思う。柔らかな電球色の光を受ける肌は白く、瞳はまるで晴れ渡った冬の蒼穹のよう。
 容姿は可憐。有希や万結とは違う意味で、その場に存在している事が疑われるかのような……生活感と言うか、目の前に実在している事のリアリティをまったく感じさせない美少女を真っ直ぐに見つめる俺。
 そう、真っ当な生命が持つ俗臭をほとんど纏う事がなく、しかし、妙な艶やかさと清楚さを同居させている。少女と言う、未だ花開く前
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