第三十話 春季大祭その十二
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「ちっち、昨日この子と何かあったの?」
「実はですね」
私が説明しようとしたら先手を取られて。よりによってこんなことを言われました。
「デートだったんですよ」
「デート!?」
「はい、二人きりでずっと」
「何がデートよっ」
その言葉を聞いた途端にまた八重歯を出してしまいました。どうも最近何かあると八重歯を出してしまいます。三年になってから。
「そんなのじゃないじゃない。憩の家に行ってお墓地に行って参拝しただけじゃない」
「ちっちの詰所からそれよね」
「はい、そうだったんですよ」
むっとした声で先輩に返しました。
「この子が何時の間にかいて」
「そこからそのコースは」
先輩は物心つく前からおぢばに帰っておられるので当然詳しいです。それに住んでおられるのも高校一年の時からで相当なものになりますから。
「結構長いじゃない」
「東寮の前までだったんですよ」
これは阿波野君の言葉です。
「一緒に行ったのは」
「最後までガードしていたってわけね」
「ええ、まあ」
ここでもまた本当に能天気でいい加減なことを言っています。それを先輩に対しても見せるなんて。何でこんな子なんでしょうか。
「ナイトってわけですね」
「いいナイトじゃない」
先輩もそれを御存知なのかどうかわかりませんが。にこりと笑って私に言うのでした。
「顔もスタイルもいいし背も高いし」
「人間外見じゃないじゃないですか」
そりゃ物凄い美人の先輩に言っても説得力のない言葉ですけれど。
「大切なのは心だって今先輩が」
「心は顔に出るものよ」
「そうなんですか」
「そうよ。だから」
また阿波野君を見て言う先輩でした。
「別に邪険にする必要はないわよ、この子は」
「邪険になんかしていませんけれど」
そもそも私は贔屓とかが好きではないです。
「ただ。この子が凄くいい加減ですから」
「女はおみちの土台よ」
よく言われる言葉を先輩にも言われました。
「だから。男の子の多少の変な部分は片目を瞑ってね」
「多少どころじゃないですけれど」
「そうかしら。奇麗な目してるじゃない」
「いやあ、そうですかね」
先輩の御言葉にさらに頭に乗る阿波野君でした。
「まあ僕は別になんですけれどね」
「奇麗な目ですか」
私は今の阿波野君の言葉に目を顰めさせながらその目を見ました。どう見てもいい加減なことしか考えていない目です。能天気で適当な。
「そうでしょうか」
「ちっちも奇麗な目してるし」
「そうですよね。先輩って目が奇麗なんですよ」
またまた先輩に合わせるみたいに言う阿波野君でした。
「肌も白いし髪だって黒々としてさらさらで」
「そうでしょ。小柄だけれどね」
「背は伸びなかったんですか」
「そうよ。中学校の時から
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