巻ノ四十五 故郷に戻りその九
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「それは」
「あの方ですか」
「そこはわからぬが」
「それでもですな」
「その呼び名になってな」
そうしてというのだ。
「それが定まったな」
「でしたか」
「しかしな」
「それでもですか」
「拙者は構わぬ」
「源四郎様と呼ばれても」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「何か拙者に相応しいからな」
「そのお名前が」
「そうも思うからな」
だからというのだ。
「御主もそう呼びたいならな」
「その様にですな」
「呼ぶといい」
「では」
武士も応えて言った。
「その様に」
「それではな」
「飫冨源四郎殿の様ですな」
「うむ」
「だからこそですか」
「よいと思っておる」
彼の本来の名ではないがというのだ。
「それでもな」
「そうでしたか」
「飫冨源四郎殿のことは知っておろう」
「武田家でも随一の方でしたな」
「その武はな」
「では飫冨殿の様に」
「わしも戦い」
そしてというのだ。
「義を貫いていきたい」
「死すまで」
「そう考えておるからな」
「だから源四郎様と呼ばれても」
「よいのじゃ」
こう話すのだった。
「わかったな」
「はい、それでは」
「それでじゃが」
己の名のことを話してからだった、幸村は。
若い武士にだ、あらためて問うたのだった。
「式の用意は進んでおるが」
「はい」
「御主達も出るのじゃな」
「そうなっています」
「そうか、では祝ってくれるか」
「無論です」
若い武士は微笑んで幸村に答えた。
「源四郎様にとってこの上なきよきことですから」
「だからか」
「是非そうさせて頂きます」
「有り難い、ではな」
そう聞いてだ、幸村はさらに微笑んで言った。
「祝ってくれ」
「それでは」
「うむ、そしてな」
「そのうえで、ですか」
「拙者は必ずよき家をもうける」
そうすることをだ、彼にも約束した。
「妻と共にな」
「そう言われますか」
「思うが故にな」
こう約束するのだった、そしてだった。
そうした話をしてだった、彼もまた自ら動いて用意をしていた。
そしてだった、いよいよだった。
「国境にです」
「来られたか」
「はい」
「わかった」
家臣の話を聞いてだ、幸村は応えた。
「それではな」
「お迎えにですな」
「それがしが行くか」
「いえ、それはです」
「違うのか」
「源四郎様は一方の方ですので」
この度の祝言のというのだ。
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