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会いたかった
4部分:第四章
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るだけで」
「嬉しいからね。それでいいからね」
「そうなの。そう思ってくれて私に」
「うん。そうだよ」
「じゃあ私。これからもね」
 これまで以上に明るい顔になって。僕に言ってきた。
「風邪、ひけないわね」
「あれっ、何でそうなるの?」
「だって。私に何かあったら」
 今度は少し苦笑いになって。彼女は僕に言ってきた。
「またよね」
「うん、その時はね」
「そうでしょ。寮まで来てくれて」
「迷惑かな、それって」
「そこまで心配してもらう訳にはいかないから」
 これが彼女の言葉だった。
「だからね。そんなことになるより」
「風邪をひかないでいてくれるんだ」
「他の病気もよ。それに」
「それに?」
「私に一日会えなくて不安だったのよね」
 彼女は僕に今度はこう尋ねてきた。
「そうだったのよね」
「当たり前じゃない。本当にさ」
 僕は彼女の今の言葉にすぐに言い返した。自分でも必死な顔になっているのがわかる。
「会いたかったよ。本当に」
「そうよね。君日曜でも部活がなくても学校に来てね」
 若しくは彼女と待ち合わせてデートだ。寮生なので僕の方から学校のあるこの町まで来る。だから僕は毎日この町に来ていることになる。
「そうしてくれてるから」
「会えないなんて本当に」
「それ君だけじゃないから」
 こう僕に言ってきた。
「私もだから」
「君もなんだ」
「そうよ。昨日一日寮の自分のお部屋で寝ていて」
 それでだというのだ。
「君に会えなかったから。だからね」
「辛かったんだ」
「同じなのよ。会えないと辛いっていうのはね」
 僕だけじゃなかった。それは。
「私もだから。それでなのよ」
「もう病気にはなりたくないんだ」
「絶対にね。本当にね」
 彼女はここで満面の笑みになって僕にこう言ってきた。
「会いたかったわ」
「うん、僕もだよ」
 僕も笑顔になって返した。本当にそうだった。
 僕達はやっと会えた今この時を心から喜んでいた。そのうえで。
 流石に抱き締め合う訳にはいかなかったけれど笑顔を見せ合った。会いたかったからこそ。


会いたかった   完


                      2012・6・4

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