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歌集「春雪花」
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 傾きし

  日も虚しきし

   旅先の

 伸びたる影に

    君ぞ恋しき



 私用で来た以前住んでいた街…彼の住む場所に近い場所…。

 用も済み、あちらこちらと歩いてみれば…その街並みは全く変わっていた…。

 とある駅の西口…ロータリーの中にあるベンチに座り、そこにある木々を眺める。

 陽は傾き、西日が梢に陰影を与え…道路には長い影が落ちている…。

 そんなオレンジに染まりつつある夕暮れ…彼の近くに来ていると言うのに会うことも叶わず…ただただ、彼を恋しく想うことしか出来ない…。

 こんな虚しさは…もう、いらないのに…。



 溜め息を

  吐きてや風の

   掠いしも

 梢を鳴らし

    淋しさぞ増す



 彼を想い溜め息を吐けば、夕暮れの風が全て持ち去るように吹いてきた…。

 だが…その風は木々の梢を鳴らしながら去るものだから、その音が淋しく聞こえ…私の心の淋しさが余計に増してしまった…。

 彼に会いたい…多少無理をして我が儘を通せば会える距離に来ている…。

 たが…出来る訳がないのだ…。

 彼に迷惑を掛けることは出来ない…いや、彼に嫌われたくない…が、本音だろう…。

 私は一人ベンチに座り…淋しさに泣きそうになることを堪えるのが…精一杯だった…。

 この淋しさ…この苦しみは…一体、いつまで続くのだろう…?





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