第五話 仮面舞踏会だよミューゼル退治 その@
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血統』という表現を使った方が分かりやすいだろう。
この貴族社会の文字通りの最下位格から一世代で脱出するには、『くちなわの道』、つまり汚い仕事をする道を選ぶか辺境惑星の開拓を成功させて所領と爵位を賜るしかない。
あるいは騎士の道の体現者、大帝の理想の体現者として近衛兵に抜擢されるか、だ。いずれも平坦な道ではない。
「分かりました。より多くの立派な騎士と出会えますよう願っております」
「アルフレットは立派だな。生まれながらの帝国騎士でも、名門の家の子でもなかなかいないぞ」
「そうなれるように、努力する」
アルノルトの遠回しな助言とブルーノの皮肉を背に、俺は大股に書庫の扉をくぐった。
無論、セバスティアン・フォン・ミューゼルが帝国騎士として見本になるような奴じゃないのはとっくに知っている。
騎士会館の記録を当たるまでもなく、ミューゼル家の経済状態が芳しくないという噂は聞こえてきた。
父上が平民時代から懇意にしている商人や幼年学校の同級生、教官に遠回しにあるいは直接的に聞いたり、マトリクス──二十一世紀におけるインターネットの現代版だ──の情報を軽くあたればすぐに分かった。
ミューゼル家の先々代ゴットハルト・フォン・ミューゼルは多くの堅実な投資といくつかの投機的なそれを行って着実に財産を増やした利殖家だったが、現在の当主セバスティアンは経営の才に乏しく、ゴットハルトの築いた財産はセバスティアンが当主を継いでから減少の一途を辿っている。有力な一門の後ろ盾もないことから、経営状況はわずかの荘園も保有する会社も決して楽なものではない。
俺より四つ年下で三代前の当主と同名の嫡男ラインハルトは将来を嘱望されているが、それまで家が保つかどうか…。
富裕な平民の中にはミューゼル家の帝国騎士株を狙っている者もいるようだ。
最後に話をした商人バロンブルムは自分もその一人だ、ということを言外に匂わせながら教えてくれた。
「わしも吹けば飛ぶような貧乏貴族に平民平民とさんざん見下されてきましたからなあ。死ぬ前に若様にじじさま、と呼ばれてみたいもんです」
いかにも平民、商人という顔のバロンブルムに名跡を狙われるような惰弱な男だということが分かっている相手を忠告を無視してわざわざ調べる、会おうとするのはアリバイ作りにほかならない。
俺がミューゼル家に幻滅する、敵と見なす理由を周囲に認めさせるための。
ゆくゆくはミューゼル家が父上の敵ロイエンタール系の帝国騎士の敵、帝国騎士階級全体の敵、貴族社会の敵と見なされるように仕向ける布石である。現時点では全く接点のない俺にはミューゼル家を潰す理由もないし、格上の貴族を潰す力なんて当然今もこの先も、よほど出世しない限りあるわけもない。なら、作ってしまえというわけだ。
「灯りを
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