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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百一話 人ではない何か
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向けて帝国を動かしているのは、リヒテンラーデ侯と帝国軍三長官の四人だ。この四人の間に不協和音は無い。今ではシュタインホフ元帥もヴァレンシュタイン司令長官に協力している。

司令長官は強引ではないが、圧倒的な力で帝国を動かしていると言っていい。まるで何かに追われているかのようだ。司令長官は決して無謀な性格ではない。果断な所はあるが慎重で冷静な性格だ。反乱軍の撃滅は来年でも良かったはずだ。確かに大佐の言うとおり、何かがおかしい。

「司令長官は年内に片付ける必要があると考えている。卿はそう言うのだな」
「むしろ、年内でなければ片付けられない、そう考えているのかもしれません」
確かめるようなラインハルト様に慎重な口調でオーベルシュタイン大佐は答えた。

年内でなければ片付けられない、どういうことだろう。反乱軍の回復を恐れている、そういうことだろうか。ラインハルト様は一瞬私を見てからオーベルシュタイン大佐に話しかけた。

「卿の言う事は、年を越すと帝国には反乱軍を相手にしている余裕は無い、いや、無くなると言う事か?」
「……はい」

「内乱が起きると言うのだな」
「……司令長官はそう考えているのではないでしょうか」
「!」

一瞬だが、空気に緊張が走った。いや、走ったように思えた。内乱が起きる、つまりフリードリヒ四世が死ぬと言う事か。確かに皇帝は最近病気がちだ。しかし司令長官が反乱軍の撃滅に動き出したのは皇帝が病気がちになる前だ……。

「オーベルシュタイン、キルヒアイス、これから話すことは他言を禁じる」
「はっ」
「先日の会議で司令長官は陛下のお命は長くないと考えていると言われた。だから今敵を撃滅すると」

「!」
「ただし、年内という言い方はしなかった」
「……」
思わず私達は顔を見合わせた。お互いに何を考えているのか読みあうかのように沈黙が落ちる。

「卿は司令長官が陛下の御病気を予測していたと思うか」
「いえ、今の御病気はおそらく謀略でしょう、敵を誘引するための。余りにも敵に都合が良すぎます」
「……」

「ただ、やはり小官は司令長官が陛下のお命を年内一杯だと考えているのではないかと思います。その判断材料が何なのかは分りませんが」
「……」

今の病気が敵を誘引するための仮病だというのなら、フリードリヒ四世の余命が年内一杯という判断は何処から出たのだろう? ヴァレンシュタイン司令長官が根拠も無しに判断したとも思えない。

何か宮廷医に伝手が有るのだろうか? それともリヒテンラーデ侯から何か聞いたのだろうか? 分らない、分っているのは司令長官が私達の知らない何かを知っているという事だ。

不意に司令長官の予測が外れて欲しいと思った。ヴァレンシュタイン司令長官は余りにも完璧すぎる。全て
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