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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百一話 人ではない何か
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此処までの道のりは決して平坦ではなかった。五月中旬から六月一杯までかかってほぼ全滅といってよい艦隊を一から作り直したのだ。問題になったのはやはり分艦隊司令官の人事だった。
少将、中将の階級を持つものでめぼしい人物は既に宇宙艦隊の各艦隊に配属になっている。さすがにこれを取り上げる事は出来なかった。ラインハルト様は思いきって若手の准将を六人集め、それぞれに千五百隻ほどを指揮させることにした。
ブラウヒッチ、アルトリンゲン、カルナップ、グリューネマン、ザウケン、グローテヴォール、ラインハルト様が集めた六人だ。本来なら二百から三百隻を指揮する立場だ。それがいきなり千五百隻を指揮する事になった。
当然、混乱し試行錯誤を繰り返した。それでも六月の終わりにはラインハルト様を満足させるだけの艦隊運用を見せた。ようやくラインハルト様の愁眉も晴れたといって良い。
“俺は皇帝になることを諦めたわけではない。しかし、今は駄目だ。俺には力が無い。今は実力をつけるときだと考えている” ラインハルト様の翼は折れていない。強く羽ばたくために力をつけようとしている。
“幸い目の前に良い手本がある。俺に何が不足しているのか、俺は何を身につけるべきなのか、じっくりと観察させてもらおう”
今ラインハルト様が一番気になっているのは、ヴァレンシュタイン司令長官がどうやって反乱軍を挟撃しようとしているのかだ。ラインハルト様は自室にオーベルシュタイン大佐を呼び確認したが大佐も分らなかった。
むしろ大佐は別のことに気を取られているようだ。
「司令長官閣下は何故年内に反乱軍を撃滅するのでしょう」
「? どういうことだ、オーベルシュタイン」
ラインハルト様が訝しげに問いかけると大佐は抑揚の無い声で
「余りにも慌し過ぎます。敵の誘引はもう少し後でも良かったのではないでしょうか。そうであれば訓練も十二分に出来たはずです」
と答えた。
確かにオーベルシュタイン大佐の言うとおりだ。いささかあわただしすぎる。時間に余裕が無い。大佐は不満に思っているのだろうか?
「大佐はヴァレンシュタイン司令長官の作戦に反対なのですか?」
「いえ、そうではありません、キルヒアイス大佐。敵を大軍で攻め込ませそれを撃滅する。正しい戦略だと思います。それをこの短い期間で実現しつつある、見事としか言いようがありません。ただ、何故今なのか? 何故年内なのか?」
「……」
確かにそうだ。何故今なのか? 何故年内なのか? 私とラインハルト様はオーベルシュタイン大佐の言葉に顔を見合わせた。
ヴァレンシュタイン司令長官はラインハルト様の敗北後、恐ろしいほどの素早さで反乱軍の誘引、撃滅作戦に取り掛かった。そして帝国をそのために一つにまとめつつある。
今反乱軍撃滅に
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