第178話 徐元直 前編
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であれば二人にはお待ちいただきます」
二人だけの空間を割るように泉の声が聞こえた。彼女は正宗と美羽が深刻な会話をしていることを立ち聞きしたのか遠慮した口振りだった。
美羽は頭を下げ片膝を着いた泉を見て素の顔に戻った。正宗も平静を装い佇まいを正した。
「泉、無用な気遣いじゃ。兄様、荊州牧の話はしかと承りました。水鏡殿と単福を待たせては悪いですのじゃ。ささ、急ぎましょ」
美羽はあっけらかんとしたと快活な笑みを浮かべ、正宗と泉を順に見た。そう言うと美羽は正宗の手を取り、正宗を急かした。泉も美羽のペースの飲まれ、先を進む美羽と正宗の後を追った。
正宗と美羽、それに泉が謁見の間に入ると既に鏡翠と見知らぬ女がいた。その女はショートボブで濃紺色の髪だった。顔は平伏していて正宗にも見えなかった。だが、衣服から除く腕にある遠眼でも目立つ傷跡からして、かなりの実戦を経験しているように見えた。
「鏡翠、わざわざ済まなかったな。後ろにいるのが単福か?」
正宗は椅子に腰掛け、鏡翠に声をかけると単福らしき人物に視線を移した。美羽は正宗の左側に立ち、正宗の右側には泉が一歩前に出て立った。
「後ろに控える者は単福にございます。単福、挨拶をしなさい」
鏡翠は顔を上げると正宗に説明し単福に声をかけた。
「単福にございます。車騎将軍の召還の思し召しに従い罷り越しました」
徐庶は朝廷の重臣である正宗を前にしても緊張している様子は全くなく堂々と自己紹介をした。その様子に美羽は感心した様子だった。それは泉も同様だった。
「直答を許す。面を上げよ」
正宗に声をかけられた徐庶は顔を上げた。
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