第178話 徐元直 前編
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のだ。荊州を二度と戦火に晒さないと。劉g殿は人物としては優秀だ。だが、所詮は傀儡にしかなれん。荊州に災いがもたらされた時、彼女は災いに毅然と立ち向かいそれを打ち払う覚悟がない。美羽。その覚悟が劉g殿に有るか? もし、あるならば私は彼女を見込んで精一杯の支援をしよう」
正宗は強い意志を感じさせる目で美羽を見た。自分に近しい美羽を据えたいことも彼の本心だろう。だが、同時に彼は、劉gが劉表の干渉を払いのけ、正宗の目指す天下のため荊州牧の職務を全うする覚悟があるなら支援する用意があるのだろう。その証拠に正宗は真剣な表情で美羽の瞳を真っ直ぐに見ていた。
「兄様、言わずにおこうと思いました。でも、兄様の存念を聞いたからこそ、打ち明けられます」
美羽は言葉を切った。
「劉g殿は荊州牧の地位など望んでいません」
美羽ははっきりと言った。
「どういうことだ?」
正宗は劉gが劉表の後を継ぎ荊州牧の地位に就きたいと考えていると思っていた。劉gは聡明だが自主性に欠けていた。母親想いの彼女は良くも悪くも母親の期待に応えようとする性格だ。正宗の見立ては間違ってはいなかった。だが、正宗は劉gの本心までは見抜いていなかった。美羽は劉gを預かり日々の生活で気にかけていたのだろう。だから劉gの気持ちを理解できたのかもしれない。
「劉g殿は継母と妹に殺されかけ、彼女の母は謀反の嫌疑をかけられ朝廷に召還されました。彼女は言っておりました。もう疲れたと。私はただ静かに暮らしたい。でも、私の生まれが、それを許さないだろうと」
劉gの気持ちを代弁する美羽は心痛な様子だった。正宗は美羽の告白を聞き口を噤んだ。劉gは苦悩していたようだ。そのことを知り正宗も自省していた。
「劉g殿は見立て通り聡明のようだな」
正宗は小さな声で呟いた。劉gは聡明である。惜しむらくは為政者としての心の強さだろう。正宗は劉gの本心を知り、次期荊州牧は美羽以外にいないと理解した。
「美羽」
「はい」
正宗は美羽をしばし凝視した。
「荊州牧として荊州を守る覚悟はあるか?」
「選択肢はないのでしょう」
美羽は笑みを浮かべた。
「兄様、妾にとって荊州は第二の故郷と思っているのですじゃ。荊州の民のためなら、この手を血に染め抜く覚悟などとうにできていますのじゃ。兄様が私を気遣い蔡徳珪攻めに参加させなかったこと残念に想っていました。妾はとうに覚悟はできておりました。平和とは何かを犠牲にするものだと理解しております。人は神ではありませんのですじゃ。救える命を救うことしかできません」
美羽は神妙な表情で正宗に答えると微笑んだ。正宗は美羽の気持ちに気づき正宗は自省した。
「正宗様、水鏡様と単福殿が参られました。お取り込み中
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