第178話 徐元直 前編
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って何度か頷きながら聞いていた。
「兄様、役人殺害の理由は分かりました。単福なる者は友人の敵討ちをして日陰者になったのですね」
美羽はしみじみと感慨深げに言った。儒教社会と侠が色濃い時代において、徐庶の行いは賞賛されるべきことと言えた。
「単福の本当の名をお教えくださいますか?」
「徐元直という。豫州潁川郡の生まれだ」
「豫州。兄様、単福のことは妾に預からせいただけますか?」
美羽は神妙な表情で正宗に頼んだ。
「そのつもりだ」
「兄様、単福は情に厚い人物なのでしょうね。良い人物を紹介していただきありがとうございました」
美羽は優しい笑みを浮かべ正宗に微笑んだ。
「単福の意思は確認できていないのだがな」
正宗は嬉しそう答えた。彼は美羽が徐庶を受け入れてくれたことが嬉しいようだ。徐庶の行いは侠の感覚からすれば義挙と言える。だが、徐庶は罪人であることに変わりはなく、汝南袁氏の名門出身である美羽が徐庶を敬遠する可能性は少しはあった。しかし、美羽は正宗の懸念を余所に徐庶を気に入っているようだった。
「兄様、ご心配しなくても大丈夫ですじゃ。ここまでお膳立てしてくだされれば、後は単福を口説き落とします」
美羽は太陽のような笑顔で正宗に言った。
「美羽、単福のことをよろしく頼んだぞ」
「兄様、お任せください。単福の母御と一緒に住めるように取りはからいます」
「気が早いな」
「単福は私に仕官せずとも、兄様から話を聞かされては無視はできません。友人との友情のために罪人に身を落とせる者です。きっと、母御の身を案じていることでしょう」
美羽はまだ会ってもいない徐庶のことを気遣っていた。
正宗は美羽の優しさと決断力に触れ、美羽なら徐庶の心を解きほぐすことができ、荊州牧の重責を担うことができる確信した。
「美羽、もう一つ話しておきたいことがある」
正宗は神妙な表情で美羽に言った。美羽は彼の雰囲気の変化に重要な話と感じたのか先程までと違い神妙な表情で彼の顔を見た。
「美羽、私はお前を次期荊州牧に上奏するつもりだ」
美羽は両目を見開き驚いていた。彼女には予想外の告白だったのだろう。
「兄様、荊州牧には劉g殿を押すのではなかったのですか?」
「そのつもりであったが考えを改めた。劉g殿では荊州を守りきれん」
「私もできる限り劉g殿を補佐いたします」
「それでは駄目なのだ」
正宗の言葉に美羽は沈黙して正宗のしゃべり出すのを待った。
「今回、私は大勢の荊州の民を殺した。その中には無辜の民も含まれていた。何故、私は殺したか分かるか? 将来の禍根を完全に断つためだ」
美羽は正宗の心中を察したのか哀しい表情で正宗を見つめた。
「私は誓った
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