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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百話 作戦会議
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線に出ていません。艦隊司令官の経験すらない。副司令長官は先日のイゼルローン要塞攻略戦で大敗したローエングラム伯です。姉のおかげで副司令長官に留まっている」
「帝国軍は頼りにならない司令長官と副司令長官に率いられて弱体化しているのです。今こそ帝国を打倒する機会です」
フォーク准将は最後には演説でもするような語調でまとめた。
「その見方は危険だ。司令長官のヴァレンシュタイン上級大将を甘く見るべきではない。アルレスハイム、ヴァンフリート、第六次イゼルローン要塞、いずれも彼の前に同盟軍は苦汁を飲まされた」
「彼が前線に出なかったのも病弱だからではない。国内の内乱に備えるためと見るべきだ。彼がミュッケンベルガー元帥の腹心であった事を忘れてはならない」
「副司令長官のローエングラム伯も決して無能では無い。前回は勝つことが出来ましたが今回も勝てるという保証は無い。敵を甘く見るべきではない」
「ヤン中将、君がヴァレンシュタイン提督を高く評価しているのは分る。だが彼は未だ若いし、失敗や誤謬を犯すことも有るだろう」
言葉を発したのはグリーンヒル中将だった。
「それはそうです。しかし勝敗は結局相対的なものでしか有りません。彼が犯した以上の失敗を我々が犯せば、彼が勝って我々が敗れる道理です」
そんな甘い相手じゃない。本当はそう言いたかった。何故彼の恐ろしさを理解しようとしない。彼は我々が攻め込むのを待っているのだ。何故分らない。
「いずれにしろ、それは予測でしかありません。敵を過大評価し必要以上に恐れるのは、武人として最も恥ずべき所。ましてそれが味方の士気を削ぐ物となれば利敵行為に類するものとなりましょう。どうか注意されたい」
うんざりだった。フォーク准将の得意そうな顔を見ると今更ながら前回のイゼルローン要塞攻略が彼ら宇宙艦隊司令部の面子をいかに潰したのかがわかった。敵と戦う前に味方同士で争っている。
彼らにとって敵とは帝国軍ではなく私達イゼルローン要塞攻略戦に参加した人間なのだろう。ヴァレンシュタインはこれも予測しているのだろう。同盟が一枚岩でない、内部に深刻な対立があると。
ビュコック提督がフォーク准将を叱責している。フォーク准将はそれに対しても反論し、自己陶酔の演説をしている。この演説をまともに聞いている人間がいるのだろうか。
演説が終わり白けきった会議室の中で遠征軍の配置が決定されていった。
先鋒はウランフ提督の第十艦隊、第二陣が第十三艦隊、第三陣が第五艦隊、第四陣は第十二艦隊。
露骨な配置だった。敵とぶつかる部隊が有るとしたら私達になる可能性が高い。私達を消耗させ、残りの部隊で敵を叩く。つまり私達は消耗品として扱うつもりだろう。
遠征軍総司令部はイゼルローン要塞におかれ、作戦期間中は
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