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俺の四畳半が最近安らげない件
イポウンデーの歓待
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俺もう帰る」
ドアにかけた俺の手を、皇太子ががしっと掴んだ。
「チョット待ッテ!イポウンデーノ歓待、途中デ止メルト!」
止めると?
「イポウンデーヘノ宣戦布告トミナサレル……」
宣戦布告だと!?
「……国単位で?」
皇太子は、こくりと頷いた。
「日本トイポウンデー、開戦スル…ダッテボク皇太子ダカラ…ゴメン、断ラレルトカ考エモシナカッタ…」
皇太子はポタポタと涙を落とし始めた。……何だよもう、泣きたいのは俺の方だよ。
「……これ、あとどれだけ我慢すればいいんだ……?」
「ホントハマダ沢山アルケド…アト一ツダケ!コレヲ食ベタラオシマイデイイヤ!」
奴はいそいそと鞄の中からタッパーを取り出した。…うわ、食べる系か。嫌な予感しかしないわ。
「コレ日本ニ売ッテナイカラ苦労シタヨー」
徐に差し出されたタッパーには、ちょっと無理な感じの赤黒い、肉のようなものが詰め込まれていた。
「――なんだ、これは」
「ニカカニカマカマ。イポウンデーノ固有種。節足動物ノ肉ヨ」
「聞いた事ねぇよ…」
一つつまんでみると、猛烈に生臭い。というか磯臭い。
「…海の生き物か」
「海ニモ、イルワヨ」
開戦は困るので無理やり口に持っていくが、吐き気がこみ上げてきて口の中に放り込めない。
「せめて焼いちゃだめか」
「焼クノネ。オススメシナイケド」
皇太子がぶつぶつ呟きながら、ガスバーナーみたいなものを取り出した。火気厳禁と言ったばかりだが、まあいいや。これで最悪、寄生虫とか食中毒とかは免れる……


「ぐっ臭っ!!!」


磯臭さに死臭を混ぜ込んだような強烈な臭気が立ち昇ってきた。もう吐き気よりもっと深い、今日の朝ごはんがこみ上げてくるような感覚が喉元をせり上がってきた。
「ぐっほ」
無理無理無理もう駄目だ開戦かホントゴメン!!俺は辛うじて傍らのリュックを掴むとドアの外に転び出た。
「丹沢ダメヨ、歓待終ワッテナイヨ!」
皇太子に取り押さえられながら入口でもがいていると、地味なスーツに身を包んだ中年くらいの女性が、かつかつと歩み寄ってきた。



―――レンタルスペースで異臭を発したり変な札を貼りまくったかどで、スタッフの人にぎっちり叱られたのだ。



 帰り道。皇太子と並んで夕日の中をとぼとぼ歩く。
「ゴメンネー、ミミミット剥ガスノ手伝ワセテ」
「俺だけ帰れる雰囲気じゃなかったろ…」
ニカカニカマカマを食わずに済んだのは幸いだったが、俺の頭の中を『開戦』という言葉がぐるぐる回る。
「…イポウンデーって、どのくらいの規模の国なんだ」
「総人口386人ノ海洋国家ヨー」
―――え?
「…おいなんかバチカン市国より小さいな!?ど、何処にあるんだそれ!?言葉のニュアンス的にはポリネシアっぽいよな」
「広島ノチョ
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