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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 19
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めない。
 (それにしても、さっきのあれ……見慣れた斧とは随分形が違ってたな。刃が二枚も付いてる斧なんて製造されてるんだ。初めて知った。持ち手まで銀色とか、やたらと豪華だったし。飛んで来た勢いが加わってるにしても、人同士を繋いで浮いた二本の鎖を一刀両断しちゃうとか。切れ味凄すぎるでしょ。あの人が声を掛けてくれなかったら私、気付く間も無くサクッといってたん、じゃ……え? あれ?)
 ふと気になり、壊れて垂れ下がった鎖を見直す。
 短い。とても短い。
 拳を頭上に持ち上げると、切り口が肘より上に当たった。あの瞬間に一歩下がってなかったら、小箱ごと腕を切断されたか、体の前面を削がれていたんじゃないかと思われる短さだ。
 (待ってよ……これ、結果的に解放されたってだけで、死んでても良かったとかいうオチじゃないでしょうね? なんで!?)
 ミートリッテは山道を歩きながら、青年が溢した複数の存在についてずっと考えていた。

 「俺達」「アイツら」「彼女(ハウィス)」は、ミートリッテを護る点で共通している。多分全員、ネアウィック村を護る人間だろう。
 ただ、「俺達」に属する青年は、守秘義務だと言って素性を隠したがった。「俺達」は、今更隠れる必要が無い自警団とは異なる指揮系統を持つ、表に出られない武装集団だ。
 だが、ハウィス(村人)の願いを受けて行動している以上、自警団との繋がりも皆無ではない。
 隠れていた「俺達」と接触するには窓口が必須で、何らかの危機に面した時、村の人達が真っ先に頼るのは自警団だから。

 青年が敬語表現した「あの方」は「俺達」の上司か、それに近しい立場の人間。
 つまり「あの方」もネアウィック村を護る側。

 「アイツら」は、ハウィスから留守中の家に潜む許可を貰えるほど信頼されている、武に長けた集団。
 格下呼ばわりされていた事から「アイツら」と「俺達」には面識があり、ハウィスは両者に関わっている。
 となると、「アイツら」が自警団で、ミートリッテの警護は「アイツら(自警団)」を介して「俺達(自警団の上位組織?)」に依頼したんじゃないか。

 「奴ら」は当然、村を護る者達の敵。
 現在自警団とバーデルの軍人達が共同で警戒線を張っているのは、シャムロックを脅したバーデルの海賊達だ。
 「アイツら」が薬でミートリッテを眠らせたのも、バーデルの軍人達が酒場入りして警戒を促した翌日。
 「俺達」が捕り物ではなく護衛に就くならシャムロックの正体はバレてないだろうし、海賊達との関係も知られてはいない筈。
 危険な連中から隠したい……では拉致監禁拘束に至るほどの動機としては薄い気もするが、村に変化が起きた時機とは綺麗に重なる。
 この状況から「奴ら」は海賊達だ……と、思った。

 (いろんな勢力に囲まれた腐れ
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