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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 19
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と」
 目眩ましのつもりか、残ったシーツをミートリッテの頭に被せて、言葉を排除した下山が再び始まる。
 (悔しい……! 無知な子供が大人の事情に首を突っ込むな、対等になったつもりで俺達の行動に横槍を入れるなって言いたいの? チョロチョロされるのは迷惑だから、大人しく従えって!? どいつもこいつも勝手な事ばっかり……! ええ、ええ。私は何も知らないし、何にも気付けてないんでしょうよ! だけど、何も教えてくれないのは貴方達大人じゃないの! 肝心な時に何も話してくれないのは、いつだって大人達のほう! みんなみんな、謎かけみたいな訳解んない言葉と態度で濁してはぐらかしてばっかり! なら、自分で考えて実行するしかないじゃない! 足りなくたって届かなくたって、自分でどうにかするより他にないでしょう!? 私だってねぇ……ッ)
 優しい人達の役に立ちたい。
 そう思って、拾われたばかりの幼い少女が最初に始めたのは職探しだった。
 バーデルと違って奴隷制度はずっと昔に廃止され、近代は青少年の教育制度確立と普及に力を入れているらしいアルスエルナ王国。
 働き盛りな大人でも稼ぎ口が不足している中、経済難著しい南方領では特に「法の庇護を受けて過酷な強制労働から解放された代わり、社会的役割とそれに附随した貢献に対する報酬が大きく削がれている」未成年の就職は難しいと、ハウィスから聞いて知ってはいた。
 だから、子供である間は贅沢を言わない。働かせてくれるなら、どんなに苦しい内容で厳しくされたとしても構わない。ハウィスの家で家事を手伝いながら、ほんのちょっとでも外で収入を得られれば、それだけハウィスの負担を軽減できる。その為に村の中は勿論、近くの街へ出かけた時なども役場を訪ねてみたりした。
 けれど、結果は総て空振りで。
 南方領一大きな街の市場で偶然耳にした「怪盗」や「義賊」という言葉と意味を理解するまで、自分の無力さがもどかしくて口惜しくて……申し訳なかった。
 (私だって、一日も早く誰にも負担を掛けない自立した大人になりたいよ! だから自分が撒いてしまった火の粉を、自分の手で払い除けようとしてるのに……)
 「止まれ!」
 「!?」
 奥歯を噛み締め、悔し涙を目に溜めながらも黙って俯き歩いていたミートリッテの耳に、切羽詰まった青年の怒鳴り声が突き刺さる。
 ほぼ同時にヒュンヒュンと風を切る音が迫り、頭から冷水を浴びたような緊張感で全身が粟立った。
 (ダメッ!)
 踏み出しかけていた足を無理矢理退き……次の瞬間。
 「い……っつ!」
 両の手首に重い衝撃。
 青年との間に現れた銀色の斧。
 前のめりになった視界に映る、壊れて飛び散った鎖の破片。
 そして
 「しま……っ」
 動揺した青年の表情と呟き。
 『解放された』
 思考が認識
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