3部分:第一幕その三
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か。娼婦だった過去を消す為に」
アンジェロッティ「僕はこのことを公にするつもりはないんだが。彼女は信じない」
カヴァラドゥッシ「そうだろうね。人というものは自分の過去を知っている者はそれを必ず他人に話すと思い込む。それが嫌な過去であればある程」
アンジェロッティ「だからだよ。だから僕はサン=タンジェロ城に囚われていたんだ」
カヴァラドゥッシ「そうだったのか。しかしよく脱獄できたね」
アンジェロッティ「妹の手引きだ。彼女が看守の一人を買収して何とか」
カヴァラドゥッシ「後はここから逃げるつもりか」
アンジェロッティ「そのつもりでここに来た。何とかならないかい?」
カヴァラドゥッシ「僕が何とかしよう。君との思い出は忘れたことはない」
アンジェロッティ「済まない」
カヴァラドゥッシ「それでお腹は空いていないかい?」
カヴァラドゥッシはふとそう尋ねてくる。
カヴァラドゥッシ「牢獄の中にずっといたんだろう?見たところかなりやつれているし」
アンジェロッティ「(憔悴しきった顔で)碌に食べていないさ。死にそうになったこともある」
カヴァラドゥッシ「ではこれを食べてくれ」
ここで籠を出す。あの食べ物が入った籠だ。
アンジェロッティ「また随分一杯あるな」
目を丸くさせて驚く。ゴクリ、と喉を鳴らす。
カヴァラドゥッシ「うちの召使いが持って来るんだけれどいつも多過ぎるんだ。僕はあまり食べないというのに」
アンジェロッティ「これを僕にくれるのか」
カヴァラドゥッシ「よかったら食べてくれ。遠慮せずにね」
アンジェロッティ「わかった、それじゃあ」
カヴァラドゥッシ「食べながら考えよう。これからどうするかね」
アンジェロッティ「そうだね。それじゃあ」
ここで扉の方から女の声がする。
トスカ 「マリオ、マリオ」
カヴァラドゥッシ「(その声を聞いて苦笑いを浮かべてアンジェロッティに言う)いけない、焼き餅焼きが来た」
アンジェロッティ「焼き餅焼き!?」
カヴァラドゥッシ「信心深いけれど嫉妬も深くてね。それに」
アンジェロッティ「王党派か」
カヴァラドゥッシ「少なくとも君が会ってはまずいことになる。悪いけれど隠れていてくれ」
アンジェロッティ「わかった。では礼拝堂の中で食べさせてもらうよ」
カヴァラドゥッシ「是非ね。それじゃあ」
アンジェロッティ「うん」
アンジェロッティは礼拝堂の中に籠を持って戻る。カヴァラドゥッシはそれを見届けた後で扉の方に行く。そうして鍵を開けてトスカを出迎える。
カヴァラドゥッシ「少し早いね、今日は」
トスカ 「そうかしら」
茶の波がかった長い髪と琥珀色の瞳を持つ艶やかな女である。肌は雪の様に白く赤のドレスと良く合っている。その唇は紅であり右手には花束がある。やや高め
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