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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第2話『キミのなまえ』
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飲まれて話が通じなくなる−−などという最悪の展開にならずに済んだのは彼女の精神力に感謝し、彼女に手を出さず、且つ街の希望を叶える方法。つまりは『代案』。
事前にこの一帯を回っておいて良かったと過去の自分の行いを振り返りつつ、少女に切り出す。言葉は選ばなければならない。彼女を傷付けぬ様に、なるべく柔らかい物言いを心掛ける。
「突然だけど、ここに愛着があったりする?」
「……?」
唐突な質問に、少女が首を傾げる。
それでも何とか質問の内容は解したらしく、少々考え込んだ後、ふるふると首を横に振った。
「そうか、良かった。多分その人達は、そろそろここを奪いに来る。また襲われるのは嫌だろ?だから──」
ジークはポーチから一枚の羊皮紙を取り出し、ぺたんと座り込む少女の前にそれを広げた。
開かれたのは地図。ジークはその内の一点、この墓を包む森とは離れた林。その中央を横切る川の付近を指差し−−
「引越しをしよう。良い所……かは微妙だけど、多分此処よりは住みやすい場所。知ってるんだ」
◇ ◇ ◇
時は進み、場所は変わり、日も頂点から落ちかける時刻。
水の流れる音が穏やかに聞こえ、辺りを囲う木々が夕日を抑制し、その隙間から木漏れ日を落とす。
白銀の髪を靡かせた少女は楽しそうにパシャパシャと音を立てて、小走りに川を渡った。
「気に入ってくれたみたいで何より」
「……ぅ、……!」
先程の暗い顔は何処へやら、太陽の様な微笑みを浮かべて、掠れた喉を震わせる。
中立平原ミューラと呼ばれる場所に広がるこの林は文字通りの街の領土とは切り離され、中立地帯とされる場所。故に、街の開拓の対象になる事もなく、数多の自然が残されている。
その中心を流れるこの川は付近の山からの直通であり、川上には村もない。流れる水の美しさは折り紙付きだ。
「ほら、そんなにはしゃぐと服が濡れるぞ。上がってこいよ」
「……ぁ、……ぅ!」
少女はその若草色のドレスの裾を小さくたくし上げ、今度は水を波立てないよう慎重にこちらに向けて歩き、やがて川を渡り終える。握っていたドレスを離し、そのまま手を胸元の服のボタンまで持って行ってそれを外そうと−−
「いやちょっと待てっ!何してるっ!?」
「……?」
慌てて腕を掴み止める。不思議そうに首を傾げる少女に驚愕した後、彼女が人間ではない事を思い出す。人間としての常識も教わっていないのだから、羞恥心が無くともおかしくは無いのか。いやでも死徒とは言え大元は人間の魂なのだし羞恥心もある筈──
「ってそれどころじゃなくてだなぁ!」
「……???」
ますます不思議そうに
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