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歌集「春雪花」
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 寂しさに

  戸口を引きて

   眺むれば

 夏草香る

    夜となりけり



 独り部屋にいると、どうしても彼のことを想ってしまい…その寂しさに居た堪れず外へ出た…。

 少しばかり湿り気を帯びた風が吹き、夏草の強い匂いが夜を覆っていた…。

 あぁ…夏が来たのだな…彼の居ない夏が…。

 そう感じ…その虚しさに溜め息を洩らすことしか出来なかった…。



 星の降る

  空を見上げて

   夢見しも

 朝の光りに

    露と消えにし



 星々が競うように瞬く真夜中の夜空…。

 そんな美しい空を見上げていると、彼との未来を夢見て…その星影に希望を描いてしまう…。

 彼と一緒に暮らせたならば…彼と一緒に四季を眺められたなら…彼と一緒に生きれたならば…と。

 叶いもしないそんな夢は…明日の朝日が差し込めば、夜露のように儚く消え去るもの…。


 後に残るのは…ただ侘しく思う心だけだった…。




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