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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十九話 焦土作戦
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事が起きたら暴動が起き、政府が転覆しただろう。

焦土作戦のマイナスが最初に出るのがリップシュタット戦役だ。キルヒアイスは辺境星域の制圧に向かうが、彼は大小六十回以上戦っている。少し多くないだろうか? 本隊だとて六十回以上も戦っただろうか?

おそらく辺境星域にはラインハルトに対する恨みが骨髄まで染み込んでいたはずだ。当然だろう、食料を奪われ飢餓地獄に追い込まれたのだ。体力の無い人間から死んだとなれば犠牲の多くは老人、女子供だろう。

アムリッツア会戦が終了したのは帝国暦487年の十月だ。リップシュタット戦役が始まったのは翌年四月。いくら平民の味方だと宣言しても飢餓地獄に追い込まれた人間が僅か半年で“はいそうですか”と信じるだろうか。

“ふざけるな”の一言で終わったろう。辺境星域の戦いが多かったのはそのせいだ。貴族たちは搾取はしたかもしれないが飢餓地獄には落とさなかった。その一点で辺境星域の平民は貴族達を支持したのだと思う。

キルヒアイスがただ勝てば良いという発想から脱却したのはこの時だろう。彼がヴェスターラントを非難したのはその所為だ。一方ラインハルトはそれが判らなかった。

ラインハルトから見れば辺境星域で二億人を飢餓地獄に追い込んだ時は何も言わなかったのにヴェスターラントの二百万で何故それ程非難するのか、そんな意識があったのではないだろうか? それがガイエスブルク要塞の悲劇に繋がった……。

そしてこの焦土作戦はキルヒアイス以外の人間にも影響を与えている。先ずルッツ、ワーレンだ。彼らはキルヒアイスの副将だった。キルヒアイス同様、焦土作戦のマイナスに気付いたに違いない。あるいは彼ら三人の間で話し合ったことがあったかもしれない。

キルヒアイスとラインハルトの決裂についてもオーベルシュタインのナンバー・ツー不要論よりも戦いに対する考え方の違いが原因だと判断しただろう。キルヒアイスと決裂したラインハルトに対して不信感を持ったのではないだろうか?

ルッツはラインハルトを守って死んでいる。何処かで気持ちに折り合いを付けたのだろうか? あるいはイゼルローン要塞陥落の責任を取ったのかも知れない。

ワーレンはどうだろう。俺はワーレンはラインハルトに対し不信感を最後まで抱いていたのではないかと思う。ロイエンタールが反乱を起したとき、ビッテンフェルトがワーレンに問いかけている。

“皇帝が俺を討てと言ったらそれに従うか” ワーレンはほとんど間髪を置かず“ヤー”と答えている。常に無条件にラインハルトを礼賛するビッテンフェルトに対しどこかで反発していたのではないだろうか。

そしてケスラー。焦土作戦では初恋の女性を犠牲にされ、皇帝誘拐では彼自身が処断される寸前だった。到底ラインハルトを信用できなかったろう。それ以外にもブ
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