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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十九話 焦土作戦
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大混乱になるでしょう。最悪の場合、滅びる事もありえると考えています。ですから、今攻め込ませました」
なるほど。今なら反乱軍も万全の状態ではない。その状態で攻め込ませたほうが勝つ可能性はかなり高いだろう。司令長官の考えは判る、判るが……。
「これについては、国務尚書、軍務尚書、統帥本部総長、そして陛下にも御理解をえております」
「!」
陛下にも御理解を得ている。つまり、帝国領内に誘い込んでの撃滅は帝国の決定方針と言う事か。先程から驚かされてばかりだ。
「質問があります」
手を上げたのはロイエンタール提督だった。
「どうぞ」
「敵を撃滅すると言いましたが具体的にはどうするのでしょう?」
確かにロイエンタール提督の言うとおりだ。言葉に出すのは容易いが実現は難しい。どう考えているのか。
「反乱軍を奥深く誘い込み、前後から挟撃することになるでしょう」
挟撃、しかしうまく行くのだろうか?
「閣下」
「何でしょう、メックリンガー提督」
「挟撃と言いますが、上手くいきましょうか。敵に気付かれずに後背に回り込まなければなりませんが?」
何人かの提督が頷いている。当然だろう、敵に気付かれれば後退されるか、防がれるか、どちらにしても失敗しかねない。
「それについては、今手を打っています。未だ話すことは出来ませんが、上手く行けば挟撃は可能だと考えています」
穏やかな表情で司令長官は話すとまた一口ココアを飲んだ。
上手く行けばか……。まあこの人の事だ。上手くいかせるのだろう。となれば私たちは艦隊の錬度を再確認しておくべきだろうな……。
■ 帝国暦487年 6月23日 オーディン 宇宙艦隊司令部 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
三千万、おそらく正規艦隊だけで十万隻を超えるだろう。手は打った、おそらく上手くいくはずだ。同盟軍は前後からの挟撃で大打撃を受けるだろう。最低でも原作レベル、七割は潰したいものだ。
原作同様焦土作戦を取る事も考えたが、辺境星域二億人が飢餓地獄に喘いだ事を考えるとどうも気が進まない。それにあれはただ勝てば良いという発想から生まれた作戦だ。政治的なマイナス面の影響が大きすぎる。取るべきではない。
俺がこの世界に来てから感じたことがある。帝国では軍は国民を守るという概念が非常に希薄だと言う事だ。彼らは皇帝の軍隊だ。極端な事を言えば皇帝を守るために有るといっていい。国民を守るためではない。
おまけに同盟との戦争が始まって以来、同盟領に攻め込んでの戦いばかりだった。自国民を守ると言う意識が無いのも無理は無いだろう。その事が自国民の軽視に繋がっている。
原作でミッターマイヤーをはじめ平民出身の軍人たちが焦土作戦に驚愕はしても反対していないのがその証拠だ。同盟で同じ
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