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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第七話 偵察任務。その1
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紀伊がつぶやいた。
「誰もが思うことだ。だが、万が一のことがあれば私とお前の主砲が頼りになる。そのことを忘れるなよ。」
紀伊は意外に思った。日向は自分のことを嫌い、敬遠していると思っていたが、今の言葉には身震いするような冷たさは感じられなかった。むろん、いつもながらの多少の冷淡、冷徹さはあったが。
「はっ、はいっ!」
紀伊が上ずった声で返答した時、そっと鳳翔が近寄ってきてささやいた。
「日向さんはあなたの試合を見ていたんですよ。それだけではありません。以前からずっとあなたの練習ぶりを見ていたのだといっていました。」
「えっ!?」
「あの後私のところにきて考えを改めたと率直に言っていました。でも、さすがに本人の前で言うのは照れ臭いのかもしれませんね。そっとしておいてください。」
「はい。」
紀伊はうなずいた。じんわりと胸の奥が暖かかった。
「日向さんだけではありません。私もあなたに期待しています。」
鳳翔が言い、紀伊は黙って頭を下げた。あの試合の後鳳翔はそっと紀伊のもとを訪ねて来て短く労い、黙って手を握ってくれた。紀伊にはそれだけで十分だった。鳳翔は試合前も試合後もずっと変わらない態度だったし、紀伊に何か求めるようなこともしなかった。動き出した向上心を制約するようなことをしたくなかったのかもしれないし、言葉をかければ自分の中の感情が吐露してしまいそうだったのでやめたのかもしれない。どう思っていたのか、それは鳳翔自身だけが知っていることだった。


一方、いったん佐世保鎮守府偵察部隊と合流した呉鎮守府偵察部隊は一路南西諸島目指して海上を走っていた。
「ふ〜〜〜気持ちいいわね!!」
雷が胸いっぱい大気を吸い込みながら言った。白い雲がそこかしこに流れているが、全体としては穏やかな青空が広がっている。暖かな日差しはまさに春日和と言っていい。
「雷ちゃん駄目なのです。まだまだ油断はできないのです。」
「平気よ、だってここまで深海棲艦の駆逐艦一隻だって見かけなかったもの。あ〜あ、なんだか張り合いがないわね〜。」
「油断は禁物ですよ。」
筑摩がたしなめた。
「は〜い。わかってます。」
雷は素直に返事し、またあたりを警戒し始めた。
「長良さん、そろそろ偵察区域に入りますが、水上偵察機を飛ばしますか?」
筑摩が先頭を行く軽巡洋艦娘長良に声をかけた。長良は足を止めて、振り向いた。
「はい!お願いしてよろしいですか?」
「わかりました。姉さん!」
「おう!出番じゃの。任せておけ。」
利根と筑摩はカタパルトを構えると、大空に向けて偵察機を次々に打ち出した。
「頑張ってね!!」
「いってらっしゃい!」
「気を付けてなのです。」
「Желаю удачи。」
えっ!?と第6駆逐隊の3人は響を見た。
「今なんて言ったの
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