第13夜 上位
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した。非生産的でヒステリックな感情が爆発しそうになる。死にたくないのなら戦わなければいけないのに、死にたくないという恐怖心が戦いへの忌避感から体を震えさせる。
だが、残酷な事に逃走はありえない。闇に生きる呪獣と闇の中で追いかけっこをしてもどちらが不利なのかは目に見えている。先手必勝の速攻撃破も無理だ。相手に先手を取られている。選択肢は自然と呪法師の基本である迎撃に絞られていた。
殺せるのか、自分にあれを――自問したトレックは、生唾を呑み込む。
(た、戦ったら殺されるかもしれないだろ……!だったらいっそドレッドを見捨てて……駄目だ、いまチームを分断したら人数の少ない俺達の方が不利だ!だいたい逃げ出した時にギルティーネさんは俺に着いてきてくれるのか?そも、生き延びた後で呪法師失格の烙印を押されるかもしれない……いやでも、それで俺が生き残れるなら………)
死への恐怖を拭えない人間に、戦うという選択肢を積極的に取れる度量がある筈もない。故に誇りを捨ててでも生き残る方法へ思考が流れる。
だが、己が握る拳銃に目を落としたトレックは思い出す。
『呪法師の誇りにかけて』――悪魔に誓った盟約。より多くが生き残る為に、ひとつの能動的戦闘集団となる事を誓い合った時の感触が、臆病者の自分に待ったをかけた。
戦うのか?
戦わないのか?
戦うしか、ないのか?
(くそっ、どうする……どうすれば……っ!!)
拳銃を握る手が震え、脂汗が頬を伝う。
頭の中でギルティーネの攻撃を弾いた獣の姿が何度もリフレインされる。
駄目だ、自分が敵う相手じゃない――。
「奴め、突進と同時に俺達を突破して闇に潜るのか……これでは誰を狙って突っ込んでくるのか予測がつかない!おまけに万が一光に体を蝕まれていても、視界から外れた隙に闇がダメージを癒す!どうする、トレック君。何か策を講じなければ――トレック君?」
「え………あ、ああ」
言われて、はっとする。ドレッドが険しい顔でこちらを見ていた。こちらを叱咤する意図ではない、目の前に迫る危機に対処するために集中力を高めているが故だ。トレックはまだ戦いに気持ちが向かないまま、とにかく思いついたことを喋る。
「着こんでる鎧は、大昔の呪法師が使ってた奴……だな。呪法式の影響で壊れにくく、酸化もしない。拳銃も剣もあれが相手じゃ効果が薄いだろう」
「妥当だな。かといって下手な『地』や『熱』の呪法ではあの突進速度に対応できまい。下手の鉄砲で当たったとして、闇に逃げ込まれたら傷が癒える。消耗戦になればこちらに勝ちの目はない」
「人間が着込むと重量がかさむだけなのに呪獣が着ればこれか……悲しくなるよ」
「しかして、我々には悲しんでいる時間はない。今出会った以上、今撃破するしかあるまい。な
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