第13夜 上位
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なら、まさか!?」
『ル゛ゥゥルルルルルルル…………ッ!!!』
カンテラの照らす光のサークルの外から、聞くも悍ましい醜悪な獣の唸りが聞こえる。
その獣がいる位置には、普通なら闇に融けるはずの微かな光が「高悪のある何か」に反射して微かに瞬いていた。その「何か」がギルティーネに狙いを定めるのと、彼女が剣を振るうのはほぼ同時だった。
直後、ガキィィィィィン!!と、金属同士が衝突する音。
ギルティーネの斬撃が完全に弾かれ、彼女の華奢な体が宙を浮く。
最悪の光景が脳裏をよぎり、トレックは咄嗟に手を伸ばす。
「ギルティ………ッ!?」
だが、それはギルティーネにとっては不要な行為だった。
彼女は空中で体を回転させながら全身のばねを効かせて危なげなく着地し、瞬時にトレックの下に舞い戻ったからだ。その光景にホッとするのもつかの間、彼女を吹き飛ばした後に再び闇に突進するそれの姿を、今度は間違いなく確認した。
背中の黒い皮膚と、体の前面を覆う人工的な物体を、確かに見た。
そうだ、色が漆黒ではないと言う事は、その漆黒の皮膚の外に更に鉄のような色の何かを纏っているということだ。推測が的中して欲しくなかったトレックと、ドレッドの忠告の声とはもった。
「「奴は、人の鎧を纏った上位種の呪獣!!」」
『鉄』の呪法の唯一の弱点……「同程度の硬度を持つ物質には効果が薄い」という点をカバーする、古代の兵士の鎧をまとった上位種の呪獣が、戦場に乱入した。
上位種――その言葉が実感を伴った瞬間、トレックは背筋に冷水を浴びせられたような悪寒を覚える。
脳裏をよぎった記憶は、「5割」。
この割合は、上位種の呪獣と戦闘を行った時に死者ないし重症者を出す確率を表している。
上位種の呪獣は出現の予兆など無いし、どのような戦法を取るのかも相対するまで分からない。最悪の場合だと対抗手段を編み出せないまま全滅することもありうる。呪法師のチームは生きて帰るか全滅するかの二択である場合が多く、そのうちの7、8割程度上位種の呪獣に殺害されていると呪法教会は推測している。
つまり、今、控えめに見てもこの二つのチームが犠牲者を出さずに上位種の呪獣を倒せる確率は50%しかないのだ。そしてその50%にトレック自身が含まれていない保証はどこにもない。
ここで、トレック・レトリックという男は何の結果も出せずに闇に沈むかもしれない。
(何で……何でよりにもよって俺が試験する日の、俺の所に来るんだよ!来るんなら別の学徒か砦の呪法師のでも挑んで来いよッ!何で、俺に他の連中と同じように運よく試験を突破させてくれないんだ……!)
顔は青ざめていくのに、最初に呪獣を倒したことで抑えこんだはずの死への恐怖心が瞬時に沸騰
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