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トスカ
24部分:第四幕その二
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道を塞がれてまた言葉に窮する。
スカルピア   「ナポリに戻られたのですよ。若し貴女が王妃と御会いできても王妃は絞首台の死体に恩赦を施されることになるでしょうな」
トスカ      「そんな・・・・・・それでは」
スカルピア   「その顔だ」
 怯えて震えるトスカの顔を見てサディスティック名笑みを浮かべる。
スカルピア   「恋人の為に必死になる顔、それがいいのだ。そうやって恋人の為に必死になれる貴女だからこそ私は無理矢理にでも自分のものにしたいのだよ」
 また足を進める。蒼ざめたトスカは扉に背をつける。
トスカ      「貴方のものになぞ。何という恐ろしい男」
スカルピア   「何とでも言うがいい。嫌だというのなら窓を見るのだ」
トスカ      「窓を!?」
スカルピア   「ほら、明るくなってきている。朝が近付いているのだ。そうなれば」
トスカ      「マリオが・・・・・・」
スカルピア   「時間もまた私の味方だ」
トスカ      「そんな、マリオは」
スカルピア   「助けたければ私のものになるのだ」
 トスカを見据えて言う。
スカルピア   「さあ、ここで」
トスカ      「おぞましい。どうして貴方なぞに」
スカルピア   「どうするのだ?時間はない。今こそ」
 トスカは遂に長椅子の背に倒れ込む。そこで言うのだった。
トスカ      「私は歌に生き愛に生き常に人の為に尽くしてきました。困っている人には手を差し伸べ誠の信仰の祈りと花を捧げてきました。聖母様のマントに宝石を捧げ天の色とりどりの星達に歌を捧げました。それなのに・・・・・・それなのにどうしてこの様な報いを私にお与えになるのですか」
 そう言って泣き崩れる。しかしスカルピアはその獣欲に満ちた目を相も変わらずトスカに向けているのだった。冷酷なまでにあからさまな声で言う。
スカルピア  「さあ、返事を」
トスカ     「(泣き崩れた顔をスカルピアに向けて)私に?」
スカルピア  「そうだ、私は貴女の心が欲しいのだ。さあ」
 ここで扉をノックする音が聞こえる。
スカルピア  「入れ」
 スポレッタが入って来る。扉を閉めてから敬礼してくる。

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